愛媛県内では平成以降最悪の規模となった今回の山林火災。なぜ、ここまで火災が広がったのか。これまでの被害などを振り返ります。
今月23日、今治市で発生した大規模な山林火災。火の手は瞬く間に広がり、自衛隊のヘリや県内外の消防隊員などによる空と地上からの消火活動が続きました。

発生初日には50ヘクタールだった焼損面積は急速に拡大。3日目までに南北の広い範囲に及び300ヘクタールを越え、鎮圧までに442ヘクタールが焼けました。
今治市と隣接する西条市では、最大で合わせて3848世帯、7494人に避難指示が出されました。
発生から3日目には、山頂付近から徐々に火の手が住宅街に迫っている様子が確認され、今回の山林火災で、住宅5棟、空き家6棟、非住家11棟に被害が出ました。
今治市桜井地区では、焼け落ちた家の前で呆然とする男性…。越智通仁さん(55)は、拡大していく山林火災によって、生まれ育った我が家を失いました。
越智さん
「あらためて見るとつらいですね。知り合いから声をかけられて『気を落とすなよ』とか言われても『大丈夫です大丈夫です』みたいな、一応答えていたんですけど。つらいですね…」
被害は住宅以外にも…。今治市朝倉で60年近くミカンを育ててきた岡本光也さんの農園では、およそ50本のミカンの木のほとんどが枯れてしまいました。
岡本さん
「ちょうど剪定が終わったときに火災に遭ったのが一番つらい」
さらに、郵便局などが臨時休業となったほか、周辺の国道や高速道路が一時通行止めになったりJRが運転を見合わせたりなど、住民生活への影響が広がりました。

平成以降、愛媛県内では最悪の規模となった今回の山林火災。専門家は「樹冠火(じゅかんか)」という現象の可能性を指摘します。これまで日本の山林火災は地表近くで落ち葉などが燃える「地表火」がほとんどでした。

しかし今回は、極端な乾燥や強風などの条件が揃ったことで地表の火が木の枝全体に燃え移る樹冠火が起きた可能性が高いということです。
日本大学 地球環境学 串田圭司教授
「樹冠火によって激しく広い範囲が燃えたということになりますね。樹冠火は飛び火を引き起こす。地表火よりも燃え広がる速さが早い」
今回、山から離れた住宅からも火があがっていて飛び火で燃え移ったことがうかがえます。
そして発生から5日目、3月27日の夜から翌28日未明にかけて降ったまとまった雨もあってか、延焼は阻止。“恵みの雨”となりました。
住民
「雨はありがたい。あれだけでも助かったのではないかと思って喜んでいる」
「本当に自然の恵みの雨に感謝している」
その後も消防は、ドローンの赤外線カメラで残り火がないか調査を行ったほか、地上でも消火活動を続けました。
そして、発生から9日目の31日。熱源が確認されず延焼の恐れはなくなり。今治市から鎮圧が発表されました。
住民
「ほっと一安心。安心して寝れる」
「言葉にならないくらい嬉しい。やれやれです」
愛媛県内で平成以降、最悪の山林火災。今後も完全な鎮火に向けて警戒が続きます。








