機体の外側を覆うジュラルミン製の「外板」。
場所によって、その厚さは0.5ミリ程度だという。
極めて薄いジュラルミン板を折り曲げることなく、機体の骨組みに、リベットで貼り付けていくためには、高度な技術が求められるのだという。

ここで、回答者は、郷田氏の隣に立っていた元生産部長の森氏に移る。
「飛行機として、紫電改を代表する技術として認識されているのは、『自動空戦フラップ』であると思う。主翼の後ろにフラップという、飛行機が着陸するときに、下に下げて揚力を上げる機構のものがあるのだが、それを、実際に空を飛んで空中戦をやっているときにも動かして、敵の戦闘機よりも、小さい旋回半径で回って優位に立てるような機構というのを搭載していますので、その辺は、非常のこの機体として、当時としては、非常に優れた発明、技術的なものだと思う」
◇◇「自動空戦フラップ 自動操縦のはしり」

――それを実際に見て思うことはあるか
「この機体を見てですか? うーん…。昔、当時、生きていたら乗ってみたかったと思う、正直なところ。それか作ってみるか」
郷田氏が補足する。
「先ほどの『自動空戦フラップ』というのは、自動操縦のはしりだと考えれば分かりやすいかと思う」
再び、森氏が言葉を続ける。

「今の飛行機はフライ・バイ・ワイヤとかいって、コンピューターである程度制御されているかと思うが、それのはしりですね、今はもっと進歩していますけど。先ほど郷田が言ったように、飛行機の発展の途中のなかで、この外見だけではなくて、中に積まれているメカニズムとか、そういう機構なども進歩していく中で、この機体に搭載されている自動空戦フラップというのも、やはり技術的な遺産として非常に価値のあるものだと考えている」
◇◇新施設は26年度中に完成予定
愛媛県は、この調査結果を元に、2026年度中の完成を目指す新しい展示施設に、機体を移設するために必要な補修方法などを決める方針だ。