人とクマの距離が狭まるなか、地域の安全をどう守るべきか問われています。

荒木颯太記者
「午後0時49分です。およそ1分間の間に2発の銃声が響き渡りました」

18日、札幌市手稲区の高齢者施設に隣接する林で、メスのクマ1頭が駆除されました。

公園や住宅街…人の生活圏での出没が相次ぐ北海道内。クマとの距離が縮まっている要因は…

札幌市 環境共生担当課 坂田一人課長
「どこの山を見てもドングリが全然なっていない状況。(クマは)何か食べるものがないかと探し回っている」

餌となるドングリやヤマブドウなどが、2025年、全道的に不作となっています。

荒木颯太記者
「こちらの木、クルミだということです」

谷内翔哉カメラマン
「クマはオンコ(イチイ)の実を食べていたそうで、一か所だけ実がなくなっています」

クマは、木の実を求めて動き回っている可能性が指摘されています。

道総研フェロー 間野勉さん
「相当、本来の生息地で通常食べているドングリなどが今年は非常に少ないのかなと」

冬眠前、活発に動くクマに私たちはどう備えればいいのでしょうか。

《公園の"クルミ"に専門家が注目》

佐々木賢ディレクター
「札幌市西区にある西野西公園にやってきました。10月3日にヒグマのフンが見つかったため、公園が閉鎖されているという状況になっています」

この公園は、22日クマが出没した「西野すみれ公園」と隣り合う公園で、裏手の森は、手稲山にもつながっています。

しかし、札幌市が設定している「ヒグマ対策重点エリア」の外にあります。

クマの生態に詳しい道立総合研究機構フェローの間野勉さんです。

生活圏への出没が相次ぐ要因が、この公園にあると案内してくれました。

道総研フェロー 間野勉さん
「これはもうクマにとってはご馳走だからこういうのがあれば来ます。こういう木を生え続けている限り。ここで食べるクマが出てきてもおかしくない」

道路際に生えていたクルミです。

実が熟して地面にたくさん落ちていました。

クルミは、山林の端や川沿いなど、日当たりの良い場所を好み、公園などでも多く見られます。

道総研フェロー 間野勉さん
「彼ら(クマ)はそういう食べ物が不足する年には活動範囲、行動範囲を広げて食べ物を探す。ここに人間の柵があるけれども、ここまで来たら、そのときの出やすい場所、当然クマは周りの様子を注意しながら移動するので」

クマは、クルミに強く執着し、公園のある住宅街に接近します。

人間が対策を打たない限り、鉢合わせする頻度は、さらに高まると指摘します。

道総研フェロー間野勉さん
「この程度の藪であっても隠れる気になれば、いくらでもクマは潜んで隠れることができる。可能ならば全部の藪などが刈り払えると動物も潜みづらい」

札幌市中央区円山西町は、クマの出没が多い地域で、先週1頭が駆除されました。この地域では、住民らが主体となって対策に乗り出しています。

道総研フェロー間野勉さん
「ここまで来てこんな感じで出っ張った。そうすると出っ張ってくるところを避けるという。こんな感じで歩くみたい。それがもう綺麗に、一部このフェンスの奥の方も、笹を刈って、見通しが利くようになった。」

通学路の笹薮などを刈り取り、遠くからでも見通しがきくようにしました。

間野さんもアドバイスをするなど、一緒に対策を考えています。

道総研フェロー間野勉さん
「殺さなくて済むならば、むやみに殺す必要はないけれど、どこまでなら自分たちも汗を流しても(対策を)頑張れるのかと。義務的にやってるわけではないところが大切だと思う」