打つか、打たないか迷ったが…
2021年の10月、正太郎さんが2回目のワクチン接種をした後、異変は起きた。
ファイザー製のワクチンだった。
打つか、打たないか、迷ったが、妊婦だった妻と、産まれてくるすみれちゃんのためを思って打つことを決めた。
それはまさに、コロナ感染による胎児への影響を考えた「父親」としての決断だった。
接種した当日、発熱と腕の痛み、そして関節痛の副反応が出た。
2日目には胸の痛みも加わって「苦しい」と睦子さんに訴えた。
その後、39度の高熱が出たが、医師の指示に従って解熱剤を飲むと、翌日には熱は下がった。
その夜、「いやー、死ぬところだった」と冗談っぽく言って食事をとった。
その食欲を見て、妻は少し安心した。
しかし、夫に、あのかわいい子どもたちに囲まれた賑やかな日常が戻ってくることはなかった。翌朝、正太郎さんの体は冷たくなっていた。










