名付け親の父親は、もうこの世にはいない
東北に秋の気配が漂い始めた、2022年の9月、私は宮城県を訪れた。
4人の母親でシングルマザーの須田睦子さん(当時34歳)に会うためだ。
自宅を訪ねると、小柄な睦子さんは玄関先で私を出迎えてくれた。
腕の中には、この世に生を受けて1年にも満たない愛娘がいた。
名前は「すみれ」…しかし、名付け親で、その誕生を誰よりも心待ちにしていた父親は、もうこの世にはいなかった。

リビングには、子どもたちを包み込むように優しく微笑む遺影が祭壇に飾られていた。須田正太郎さん、享年36。
遺影の位置は、夫が日々の家族の団らんを眺められるように睦子さんが考えた。
子どもたちは、優しく微笑みかけるパパに毎日手を合わせるのが日課だという。
そして睦子さんの日課は、子どもたちが寝静まった後に、夫の遺影に1日の報告をすること…しかし、必ず涙を流してしまうと、うつむき加減に教えてくれた。










