部活動の顧問は拒否できる?

愛知県一宮市の小学校教員、加藤豊裕さん(43歳)。3年生から6年生に英語を教えています。取材日の放課後では次の授業の準備をしていました。
(教員・加藤さん)
「英語を教えたくて教員になったので、今は英語を教えることに集中できているので、そういう意味では非常にいい教員人生を送れています」
いまでこそ“こどもたちの授業に集中できる”日常ですが、以前は当たり前ではありませんでした。
加藤さんは、大学卒業後は公立中学校の教員になり、ハンドボール部や卓球部などの顧問を任されました。部活に時間を割かれ、月の残業時間は100時間と“過労死ライン超え”が常態化していました。

転機は5年前。自分のこどもたちとの時間を増やすため、部活の顧問を完全に断ることを決意しました。
校長に申し出ると“人手が足りない”と言われましたが、完全に拒否するとそれ以上言われなくなりました。部活動を断るまでは、夜12時くらいに帰宅することも珍しくありませんでしたが、いまは基本的に定時に帰宅できています。
公立学校の教員には働いた分だけの残業代が出ない

学校の部活動の実態について、加藤さんと現役の教員2人を取材しました。
(教員・加藤さん)
「どの教科よりも長く時間が費やされているのが部活」
(三重県・公立学校教員)
「本当は土日を使ってでも授業準備や公務文書(の作成)をしないと回らないのに、そこに部活が入ってくる。それだけ働いているのに仕事が終わらない」

(愛知県の高校教員・足立真哉さん)
「本来やるべき仕事がやれなくて、部活に時間が取られる。精神的な部分でつらい」
一般労働者は残業時間が増えればその分、残業代が多くもらえます。しかし、公立学校の教員は給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)によって教職調整額という本給の4%相当が上乗せ支給されている代わりに、残業代の支払いはされていません。公立学校の教員は、どれだけ残業しても残業代が支払われないことが特別法で規定されているのです。

その一方で、国の調査では公立の小学校教員のおよそ3割、中学校教員のおよそ6割が過労死ラインの月80時間以上の残業をしていました。部活による残業が重い負担となっています。