検察側vs弁護側 主張の違いは?
続けて論告。検察側は改めて犯行には「強盗目的」があったと主張した。その根拠として主に以下の3点を挙げた。
1.大島さん夫妻を殺害した後、直ちに物色して財布を持ち去った。
2.山田被告が金銭的に困窮し、借金やツケの支払いを気にしており、犯行後まもなくツケの支払いをした。
3.山田被告は大島さん宅に金品があると思っていた。
これらの事情を総合的に考慮し、そもそも山田被告が包丁を持って自宅を出た時から、2人を殺害して金品を奪う「強盗殺人」の意図があったと指摘した。
さらに検察側は、弁護側が主張する犯行の動機についてバッサリと切って捨てた。
これまでの裁判で弁護側は、パチンコに負けての帰路で大島たみ子さんから「仕事をしていないのにいいご身分ね」などと言われて怒りを覚えたのが事件のきっかけだと主張している。
検察側はこの主張に対し真っ向から反論した。
山田被告の供述が自身の心境や行動と一致しておらず、たみ子さんの発言自体があったのかどうか信用できないとしたのだ。
その理由として
・パチンコに負け自己嫌悪やいらだちの中で、親しくもなく、背を向けていたというたみ子さんに山田被告が自分から声をかけて止まって話すとは考えがたい。
・たみ子さんが何をしていたのかまったくわからない上、山田被告と認識して嫌みを言う関係性でもないし必要もない。山田被告が犯行時点でも仕事をしていないと、たみ子さんが認識している根拠がない。
・たみ子さんに対する怒りが動機であれば、克夫さんに対する攻撃を合理的に説明できない。(山田被告はたみ子さんより先に克夫さんを攻撃。さらに、たみ子さんを攻撃した後に改めて克夫さんを攻撃している)
などとし、動機に関わる山田被告の供述はそもそも信用できないとした。
さらに、仮に実際に言葉のやり取りがあり、たみ子さんに対する怒りの感情があったとしても強盗目的を否定する事情にはならないとした。