「強盗目的」はあったのか?対立する主張


事件当日の動きについて検察側、弁護側の見解は分かれた。

まず弁護側の主張はこうだ。

山田被告はたみ子さんの言葉に強い怒りを覚え、怒りが殺意となって2人を殺害。

その後、室内を物色。

まずは遠くへ逃げるために車のカギを探していたが、途中で財布を見つける。逃走資金に役立つと思ったのでそのまま持ち去った。

「物色の範囲が狭い」ことや「たみ子さんへの攻撃の方が数も多く、程度も重い」ことなどをもって「強盗目的」でない根拠とした。

一方の検察側。

まず包丁を持って自宅を出た時点で、金品を奪う目的やそのために大島さん夫妻を殺害する意図、つまり「強盗殺人」を意図していたと指摘。

根拠として、「殺害後、直ちに室内を物色し財布を持ち去った」こと、また「犯行前に借金やツケの支払いを気にしており、犯行後に実際にツケの支払いをした」ことをあげ、たみ子さんの言動に対する怒りがあったとしても、怒りと強盗目的は相反するものでなく併存できるとした。

遺族の意見陳述「一生憎み、恨みます」


2023年2月13日の論告公判。

被害者の遺族2人が意見陳述を行い、事件から6年経ってもなお癒えない苦しい胸の内を吐露した。


まず被害者の長男はこう話した。

「山田被告の行為を一生憎み、恨みます。差し戻し審前に山田被告に面会した際の記事をネットで見たが、そこには『私は死刑宣告されている』と書かれていたのでびっくりした。私には罪を犯した反省の気持ちがまったく伝わってこない。この裁判と山田被告の病気(すい臓がん)とは全く関係ない。死刑宣告してもらいたいと思います」

続いて被害者の次男がこう述べた。

「一審の判決(無期懲役)は遺族にとって納得いく内容ではなかった。到底真実とは思えなかった。両親の命が奪われたが、無期懲役の判決は両親の命が山田被告の命より軽んじられているとも感じた。山田被告の供述で、まるで母が無礼な老人のように扱われた事も私たちには耐えがたいことでした。両親の無念と私たちの悲しみ苦しみをご理解ください。私たち遺族は山田被告に極刑を望みます。死刑により死を迎える直前まで事件を反省することを期待します