夕方になると、空を黒く埋め尽くす鳥の大集団がやってきます。駅前の電線や街路樹に我が物顔で集まる鳥の正体は「ムクドリ」。鳴き声やフン害で近隣住民や専門家を悩ませています。ムクドリは、なぜ夕方から夜間に街の中心部に集まるのでしょうか。日中はいったいどこにいるのでしょうか。謎の生態を徹底取材しました。
夕方になると出現するムクドリの大群 “掃除機の音”と同じレベルの騒音被害

名古屋市西区の上小田井駅前は名古屋鉄道と地下鉄の駅、そして高速道路があり、住宅や工場も集中しています。午後5時半ごろになると、どこからともなくムクドリが集まってきました。

ムクドリは一カ所には固まらず、周辺の電線や街路樹に100羽前後の群れで何カ所かに分かれて集まります。少し時間が経つと、一斉に駅前の電柱や電線に止まりムクドリで埋め尽くされ、さえずり始めました。街路樹にも大量に群がります。

騒音の大きさがわかるアプリでムクドリの鳴き声を測ると、約75デシベル。70を超える値は、“騒々しいオフィス”や“掃除機の音”と同じレベルの音量です。
(街の人たち)
「毎日この感じで怖い。襲われたりしないかと」
「少し臭い」
「上からフンも落ちてくるし服にかかって、どうにかしてほしい」
鳴き声の騒音やフンの匂いなどの被害に悩まされています。
鳥の生態などを研究する名城大学農学部の橋本准教授は、ムクドリたちにとって駅前こそ安全な場所だと言います。

(名城大学農学部・橋本啓史准教授)
「1つは人通りが多く明るいので、夜間も(ムクドリの)天敵が近づきにくい」
駅前は夜遅くまで人通りが多く、一晩中街灯などで明るいため天敵となるタカやハヤブサなどの猛禽類(もうきんるい)やヘビなどが近づきにくくなります。さらに、集団でいることで狙われる確率も下がります。

2020年、橋本准教授が学生と行った調査では、池下駅や藤が丘駅など名古屋市内の7か所でムクドリの“集団ねぐら”を確認しました。街中はヒートアイランド現象で暖かく、夜も気温が下がらないと言います。秋になり、気温が下がる時期でもムクドリにとっては暖かい環境なのです。
(名城大学農学部・橋本啓史准教授)
「自分の所を追い払ってもまた次の所で被害が出る」