ボクシングが視線恐怖症の治療に?認知行動療法とは


視線恐怖症について専門家は…

(名古屋大学病院・精神科・徳倉達也医師)
「自分以外の人からは、なかなか分かりづらい病気だと思います。恐らく周りが見ているよりも本人の苦痛はとても強い病気だと思います」

治療には、薬を飲むか意識的に他人と関わる事で自分を慣れさせる「認知行動療法」という方法がありますが、徳倉医師は小川さんにとってボクシングが、この認知行動療法になっているのではと指摘します。


(名古屋大学病院・精神科・徳倉達也医師)
「(ボクシングは)生命の危険の状態に近いことだと思います。自分の体調を過度に気にする余裕がなくなってより相手に意識が向く」

人の目線に向き合うボクシングは、強烈な行動療法になっている可能性があるということです。

「サングラスをかければ落ち着く」 視線恐怖症の患者の日常生活とは


日常生活では、今も社会に溶け込めないつらさを抱えている小川さん。

毎日続けているアルバイトも人と会わなくて済む新聞配達。週2で行っているマンションの清掃員のアルバイトも人と話す必要がないため続いています。

(小川椋也さん)
「たまに住人と会う時が緊張する。挨拶がこわいけど、わりと1人でできる」

買い物の際に欠かせないのがサングラス。


(小川椋也さん)
「うすいサングラスをかければ、精神的に落ち着く」

短時間で済ませるため、最初に入口すぐの野菜売り場を目指しますが、人がいたため方向転換。

大回りをして売り場に行き、もやしを買い物籠の中へ入れます。会計時にも、人がレジから離れるまでウロウロしながら様子を伺ってしまいます。

夢はチャンピオン!女で一つで育ててくれた母親のために…


中学までは明るくて活発でした。しかし高校2年の時、クラスになじめず学校を中退。

アルバイト生活を送るようになり、その頃「視線恐怖症」を発症しました。

(小川椋也さん)
「ちゃんとした真っすぐな道ではなかった。高校も辞めているし。昼間からみんなは高校行っているのに自分はバイトしていて…。自分だけなんでこんなことしているんだろうという思いもあって」


それでも小川さんには、どうしても前を向いて進みたい理由がありました。それは、母親の愛子さんの存在です。

離婚後、女手一つで兄と自分を育てるため、週5日パートで働きづめになりながら学校の行事も誕生日の祝いも欠かさず大切にしてくれました。

自分がボクシングでチャンピオンになって今度は母親を支えたい。それが小川さんの夢です。

(母親・愛子さん)
「(ひきこもりが)何十年って続いたら、どうしようかなと。この子の人生もずっとそのままじゃ、いやだろうなって思って。よかったね、目標が見つかって」

人と目を合わせないよう、伏し目がちで歩く小川さんですが。


(小川椋也さん)
「病気になってからつらい毎日だけど、ボクシングでもしかしたら、このつらいって嘆いている生活から一気に逆転できるんじゃないかって思って」                                   

いつの日か、文字通り前を向いて歩けるようになりたい。その思いを抱えて、今日も、リングに上がります。

CBCテレビ「チャント!」7月20日放送より