新潟県のJR長岡駅前では、ある時期にできる“名物の行列”があります。
そのお目当ては…
「美味しいシュークリームが、スゴイ安い値段で買える」
シュークリームが1個39円!という『サンキューまつり』です。
物価高の中でも“まつり”を続ける老舗洋菓子店の思いと、シュークリームを買い求める人々の人間模様を取材しました。

1958年に創業した老舗洋菓子店『美松』で1個39円だというシュークリーム。
サンキューという感謝の気持ちを込め、毎年2月限定で販売しています。
「7箱ください」
「10個いただけますか、10箱で」
1日に3万3000個を用意するシュークリームは毎日完売!
長岡の冬の風物詩となっている行列で、甘いシュークリームに人々は魅せられ続けています。

シュークリームは、およそ15kmほど離れた見附市の工場で作っています。
外側のシューをおよそ240℃で24分間じっくり焼き上げ、冷ました後にクリームを注入…。
【美松 松井社長】
「淡々と続いているんですけど…。また一つ年を取ったなとかね、またもう1回重ねるなという、単純なことですね」
39円でシュークリームを販売する『サンキューまつり』は、67回目を数えます。
しかし今年は特に頭の痛い問題がありました。
材料の値上がりです。

「牛乳と卵、この2つでシュークリームの70%以上を占めてます」
「売値が決まってますし、数が決まってますから、引き算だけですよね」
「売上が決まって、卵とか牛乳屋さんへの支払い…」

見附市の工場でシュークリームを作ってる頃から、長岡市の店舗にはもう既に20人が並んでいました。
【記者リポート】
「オープンまで1時間半。早いですが、もう列ができています…」
― きょうは何時くらいから?
「7時半前から来ていますね」
「しりとりして過ごしてました」
オープンの1時間前、見附市の工場からシュークリームの第一便が到着しました。
「7個のお客様は2個と5個の箱を渡します…」
届いたシュークリームはすぐに1個から5個までを組み合わせ、あらゆるオーダーにスムーズに対応できるようあらかじめ箱をひもでまとめておきます。

この準備が、まさに神業ともいえるスピード。
「これもう職人技ですね。そう、これで飯食ってるから…」
オープンの30分前になると行列はさらに伸び、およそ120人が並んでいました。
「ちょっと早いですけど開店します!」
そして午後9時40頃、開店時間より20分ほど早くオープンしました。
「10箱いただけますか」
「5と5の縛りでよろしいですか…?」
先頭で2時間半並んだ男性は、10個入りを10箱、100個を購入!
それでも、税抜き3900円。

「感無量です。家族と友人に分けて食べたいと思います」
「家族で来て、家族2人はショッピングして遊んで、私一人が寒い中…」
「毎回来てますね。毎年私が一人犠牲となってこれをゲット」
その後も“大量買い”のお客が続々と…
「きょう5箱買いました」
「4箱買ってきました」
「16箱…。私は1箱、あとの15箱は友達や親戚」

オープンから1時間半が経ち、工場から第2便が到着。
客足は絶えません。
シュークリームを買うために新潟市西蒲区からやってた親子連れも。
「10箱お願いします」
「ひとり10個!で、ちょっとお友達に分けて…と思っています」
大好物を大事そうに抱え、西蒲区の自宅に戻ります。
9箱買った帝京長岡高校の3人組は、全員県外出身。
3年間寮生活を続け、サッカーに打ち込んできたそうですが…

「金曜日で退寮です」
別れの日まで残りわずか。
「終わってみればあっという間で、濃くて楽しい3年間でした」
「3年間寮でずっと一緒に生活してきたので、かけがえのない出会いとなったと…」
「シュークリームを食べてみんなで楽しみます」
やがて、オープンから5時間半がすぎました。
「シュークリームを増やすことはできません」

並んでも買えなかったということがないように、残りのシュークリームを数え、お客さんの購入希望を聞いて数を確認していきます。
それから30分で完売!
この日用意した3万3000個は、およそ6時間で売り切れました。
【美松 松井社長】
「寒い2月にこれだけ並んで買いに来ていただけるお客様を見て、もっとがんばって作らなきゃという気持ちになりますね」

ところで皆さん、大量のシュークリームをどうしているのでしょうか?
帝京長岡高校の3年生は、3人で20個を食べました。
サッカーに打ち込んだ高校生活はもうすぐ終わります。
10箱買った西蒲区の親子。
シュークリームが大好物の圭太くんが2箱を持って、兄と自宅を出ました。
向かったのは、同級生の自宅です。

「これシュークリームです」
シュークリームがつなぐ“交流”ですね。
【同級生の親】
「関係性が築けて…。何があった時助け合えるような地域ぐるみかなと思います」
それから自宅へ戻り、待ちに待った大好物のシュークリームの時間。
「うまそう」
さらに別の友達にもシュークリームをおすそ分け。
「並んで食べたシュークリームは、めっちゃ美味いです」

友達と一緒に満喫しました。
【母親】
「サンキューまつりで買いたかった。いつもお友達とかご近所とかにお世話になっているので、みんなで食べてほしくて」
お客さまへの感謝の気持ちから始まった『サンキューまつり』の行列の先に、買った人と周囲の人の笑顔がありました。