“裏街道”が通る集落だからこそ

今回訪れた夏渡戸集落は、かつて会津街道(越後街道)の側道(裏街道)が通っていたというのです。そのため、集落の入口2か所(上と下)に鐘馗堂を作り、それぞれ祭っているのです。そのため、男性の特徴がある鐘馗様だけではなく“女性の鐘馗様”も作っています。

その理由を、区長の江花一実さんに尋ねると…
「旅の人が往来するので、街道の入口どちらからも災厄が入ってくるという心配があったので2体必要。“どうせ2体作るなら男女”という単純な発想なんじゃないかな…」

いつから作っているのかはわからないそうですが、夏渡戸集落では男女の鐘馗様を当初は小正月に作っていたということです。しかし、この地域では冬に多くの雪が降ることから、時期をずらして3月になったというのです。

この日は手や足といった様々なパーツを3時間ほどかけて作り、2体の鐘馗様の大枠を作りました。ただこの日は完成とは行きません。顔を描いた後、お堂に収める前に鐘馗様に“魂”を入れる『入魂式』を行って、“鐘馗様”となるのです。

「小さい集落だから、臨機応変にやることができる」と区長の江花さんは話します。

出てくれる集落の人の負担を少しでも軽くしたい。
その思いの先には、“新潟県で一番高齢化が進む町”の現状が透けて見えます。