第52回全日本実業団ハーフマラソンが11日、山口市の維新みらいふスタジアムを発着点とする21.0975kmのコースで行われる。前回男子日本人トップの近藤亮太(24、三菱重工)が8日、「もう一度“日本人トップと1時間0分台”を、今回は狙って出す」と目標を語った。1年前は最後まで先頭集団で走り、1時間00分32秒、2位のケニア人選手と同タイムの3位でフィニッシュした。当時の近藤は、自己記録は大学3年時に出した1時間02分35秒という新人選手。同じ成績が目標でも、前回と今回の立場の違いが意味するところは大きい。

有名選手と並走した高揚感

前回大会の近藤は、精神的な高揚を感じながら走っていた。レースも終盤近くになろうとしているのに、隣を見れば佐藤悠基(37、SGホールディングス)が走っている。世界陸上とオリンピックを日本代表として何度も戦った選手。ニューイヤー駅伝最長区間(当時は4区)でも、代表を続けていた11年と12年や、21年大会で区間賞を取ったきた。ニューイヤー駅伝のメンバー漏れしてしまう近藤とは、格が違った。

「自分より格上の選手と走っていると、ワクワクというか、自分調子良いぞ、っていう気持ちに拍車がかかります。乗っているときにさらに乗るような感じで走ることができたんです」

その結果、「自分でも衝撃だった。なかなか実感が湧きませんでした」という戦績を収めた。

今年は、そのときとまったく同じ心境で臨むことはできない。近藤自身、「ナンバーカードも1番で、周りの選手たちからもそういう目で見られると思います」と覚悟はできている。「そういう立場なんですが、今年は…今年も、ですけど、挑戦していく気持ちで臨みたいと思います」。同じ心境になることは難しいが、意識してそれに近い状況を作り出す。

トレーニングとコースへの自信

昨年の結果は、基本的には成功体験である。
1~2月には三菱重工恒例のニュージーランド合宿で、マラソンに出場する選手たちとトレーニングを行った。一緒にスタートして距離を短くして行うなど、将来のマラソン進出も見据えて練習した。

ニュージーランドには林田洋翔(22、三菱重工)もいた。林田は一昨年の今大会優勝者で、当時2連勝を目指していた選手。近藤には「林田より良い練習ができたかもしれない」という手応えがあった。今年もニュージーランドで合宿し、黒木純監督からは「昨年同様、マラソン組としっかり練習ができた」というお墨付きをもらっている。

「大学時代から練習はできているけど上手く試合で力を出せないことが続いていました。自分は本当に力があるのか、という思いもあったんです。昨年は他の選手と渡り合う練習ができて、実際に結果を出して自分の力を証明できたことは1つの自信になりました」

今年も同じことをやればいいと、落ち着いて練習を積み重ねられた。
同じことがコースについても言える。

「山口のコースは自分の走りと合っています。最初の5kmが上りで少し落ち着いたペースで入ることになるので、その分後半に力を残して、後半で伸びていくペース配分の展開になる。ポイントとなる箇所でどのくらい余力があったか、どんな心境だったか、今年もイメージしやすいのはアドバンテージです。今回も残り3kmをポイントに考えていきます」

去年と同じことをしなければいけない、と考えたらプレッシャーになる。去年これができたから、今年はこういうこともできるんじゃないか、と考えられたら、昨年以上の走りも可能になる。