地力が上がっている菊地が優勝争いに加わる可能性も

男子は2月25日の大阪マラソンと、3月3日の東京マラソンがMGCファイナルチャレンジに指定されている。昨年10月のMGC本大会で、優勝の小山直城(27、Honda)と2位の赤﨑暁(26、九電工)がパリ五輪代表に内定した。最後の1枠はMGCファイナルチャレンジで2 時間05分50秒以内で走った記録最上位選手が内定する。該当者が現れない場合はMGC3 位の大迫傑(32、ナイキ)が選ばれる。
今大会出場選手では土井大輔が2週間後の大阪に、西山和弥と菊地駿弥が3週間後の東京に出場する。3人ともマラソンにピークを合わせるための、今大会での自己記録更新や日本人トップは考えていない。

昨年の世界陸上ブダペスト代表だった西山は、1年前の大阪で初マラソン日本最高タイム(2時間06分45秒)で日本人トップだった選手。だが世界陸上時から股関節の痛みがあり、1月までは状態を確認しながらの練習だったという。ニューイヤー駅伝もメンバーに入れなかった。

トヨタ自動車の熊本剛監督は「昨年ほど高いレベルの継続した練習はできていませんが、ポテンシャルのある選手なので、この実業団ハーフをステップに上がって行くと思います」と期待する。目安として「62分切り」くらいのタイムを話し合っているという。

今大会出場選手中、MGCの成績最上位は9位だった土井大輔だ。黒崎播磨の澁谷明憲監督は「タイムや入賞は特に考えていません。1週間前に速いペースの40km走をやったばかりです。それでも動くと思いますよ。この1年を通して練習の達成率も、余裕度も上がっていますから」

走力、地力そのものが上がっている選手は、そのレースに向けての調整をしなくても、想定以上のタイムを出すことがある。

同じことが菊地駿弥にも当てはまりそうだ。中国電力・佐藤敦之監督は「61分30秒くらい」が目標という。これは数字的な目安であって、「感覚で東京マラソンにつながるように走る」ことが本来の目的だ。

今大会に向けての調整はしないで臨むことは周囲も理解しているが、菊地を優勝候補に予想する声は多い。昨年の大阪マラソン(21位・2時間08分20秒)は消極的な展開にはまってしまって力を出し切れなかったが、夏以降のトラック、駅伝では安定した強さを見せ続けた。

「日本選手権(12月の10000m。9位・27分47秒76)前も足首に違和感が出て、思い切り休んだが試合では力を発揮した。そういう部分ができているので、マラソンの地力も上がっていると思う」(佐藤監督)

今の菊地なら調整をしないで出場しても、1時間0分台で走って不思議はない。
今年の全日本実業団ハーフマラソンは優勝争いとともに、MGCファイナルチャレンジに挑戦する選手の走りに注目したい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)