第52回全日本実業団ハーフマラソンが2月11日、山口市の維新みらいふスタジアムを発着点とする21.0975kmのコースで行われる。男子は前回日本人1位(1時間00分32秒)の近藤亮太(24、三菱重工)が優勝、または2年連続日本人1位を狙っている。ニューイヤー駅伝1区区間賞の太田直希(24、ヤクルト)、1月の大阪ハーフマラソン2位の四釜峻佑(23、ロジスティード)らも1時間0分台候補だ。昨夏の世界陸上ブダペスト代表だった西山和弥(25、トヨタ自動車)と菊地駿弥(25、中国電力)、土井大輔(27、黒崎播磨)らは、今大会をステップに2月末の大阪マラソン、3月頭の東京マラソンでパリ五輪代表3枠目入りを目指す。
ニューイヤー駅伝を走らなかった選手の快走が“再現”するか
近藤亮太の状態は良いようだ。三菱重工の黒木純監督は「昨年と同じようにニュージーランドで、(定方俊樹・31、井上大仁・31、山下一貴・26、ら)マラソン組と一緒に練習をしっかりやってきました。前回と同じ60分台を狙える」と話す。
同じ戦績を残せば、近藤にとっては成長といえる。前回は大会前の自己記録は1時間02分35秒で、「1時間01分30秒が目標」(近藤)だった。ノーマークだった選手が気がつけば最後まで先頭集団に残り、外国2選手には敗れたが、茂木圭次郞(28、旭化成)や今江勇人(26、GMOインターネットグループ)、佐藤悠基(37、SGホールディングス)らに先着した。
今年の違いは“無欲”で走ることが難しいこと。「前回は61分台が目標で、レースに上手く乗ることができて60分台で走ることができました。60分台を意識して再現できるかどうか」(黒木監督)前回のことを完全に忘れて走ることは不可能だろう。再現するには守りの意識ではなく、「チャレンジャーのつもり」で走ることができるかどうか。
近藤は昨年も今年も、ニューイヤー駅伝のメンバーに入ることができなかった。三菱重工に勝負強い選手が揃っていることもあるが、近藤にチーム内の選手選考を勝ち抜けない何かがある。だからこそ、思い切った挑戦がしやすいし、「今年も日本人1位を取れば、駅伝で何が自分に足りないか確認できると思う。それをクリアできれば成長できる」と黒木監督は期待する。
近藤が自身の“再現”を目指すのなら、順大の1学年後輩の四釜峻佑(しかま しゅんすけ)は、先輩の“再現”を目指す。ニューイヤー駅伝に出ていないルーキー選手が今大会で1時間0分台を出せば、あるいは日本人トップを取れば、前回の近藤と同じになる。
四釜は11月の東日本実業団駅伝4区で、1カ月後に10000m日本新を出す塩尻和也(27、富士通)に10秒差の区間2位。12月には10000mで27分50秒05のチーム日本人最高タイムもマークした。ニューイヤー駅伝では3区か5区への出場が有力だったが、インフルエンザにかかり欠場を余儀なくされた。
駅伝の欠場理由もトラックの自己記録も、1年前の近藤とは異なるが(近藤の10000mは当時28分51秒83)、「60分台が目標」(別府健至監督)である。
しかし今大会までの実績では、すでに紹介したように四釜が近藤を上回る。四釜は今年1月末の大阪ハーフマラソンでも、優勝した定方駿(26、マツダ)と同タイムの1時間01分41秒で2位と健闘した。ペース次第では1時間0分台前半を出してもおかしくない選手である。
好記録が多数誕生している山口のコース
山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする今大会のコースは、最初の5kmが上りで風も向かいになることが多い。序盤でスピードが上がらないが、7kmまでは下りで10kmまでは必ずスピードが上がる。12kmまで緩やかに上った後は、20kmまで緩やかに下る。風向きにも左右されるが、5km以降は最後まで好ペースを維持できる。
純粋な選手権試合でペースメーカーは付かないこともあり、前半から超ハイペースにはならないものの、昨年は日本選手7人が、一昨年は15人が1時間0分台をマークした。好記録が生まれやすいコースと言っていい。
1時間01分07秒を持つ坂東剛(27、大阪ガス)や前回12位(1時間01分19秒)の住田優範(28、愛知製鋼)、ニューイヤー駅伝1区区間賞の太田、森山真伍(25、YKK)、齋藤椋(25、旭化成)らも先頭争いに加わるだろう。1時間0分台は十二分に期待できる選手たちだ。

















