◆命を狙われタイに避難

国境地帯できのこの生産に取り組むミャンマー人のヘンテットさん(仮名)も、支援を受けた1人です。クーデター前は、民主派政党で活動していましたが、軍に命を狙われて国内を転々とし、2年前にタイ側へと逃れました。親族のひとりは、軍に殺害されたといいます。

ミャンマー避難民のヘンテットさん「仕事も住む家もなくなり、持っていた土地も軍に奪われ、私はすべてを失いました。クーデターのせいで私の人生は台無しになったのです」

きのこの生産に必要な土地や設備は、井本さんのNPOが支援しました。

RKBバンコク支局 村橋佑一郎「日光を遮ったこちらの小屋で、温度などを管理しながらきのこを栽培していまして、たくさんの菌床が並んでいます」

多いときで1日に約60キロを出荷し、収入は日本円で月に15万円以上。地元住民から家を借り、子供たちを学校に通わせることもできるようになったといいます。

ミャンマー避難民 ヘンテットさん「最初の4~5か月は、どうしたらいいか分からずとても不安で大変でした。井本さんたちが資金などを援助してくれたおかげで、今は安定した生活を送ることができます。本当に感謝しています」

◆ベビーコーンを日本へ

こうした避難民への農業支援は今、さらに広がりつつあります。



吉田裕太郎さん「ここはベビーコーンの畑です。ここでできたものを弊社で買い取って、買い取った金額を農家(避難民)の人に還元すると」

佐賀県に本社を置く農産物運送業「福岡ソノリク」は、井本さんのNPOとも協力し、2023年12月からベビーコーンの買い付け事業を始めました。タイにある現地法人が培ってきた農業支援のビジネスノウハウを生かし、土づくりから収穫までを一貫してサポートしています。

吉田裕太郎さん「いまミャンマーの方に必要なのは、とにかくまずはコストをかけないで栽培できるもの。ベビーコーンは60日後から収穫できますので、少しでも早くキャッシュに替えられる品目。日本に出荷して日本の皆様にも食べていただきたい」

◆「日本が関われることは大きな意義」

日本政府も2023年度から、NPOの支援活動に約3億円の事業資金の提供を決定しました。副理事の井本さんは、歴史的な背景からミャンマー軍と一定の関係を保ってきた日本にとって、ミャンマー国民への連帯を示す「重要な一歩だ」と話します。

NPOグレーターメコンセンター 井本勝幸副理事「現状は軍事政権が牛耳った形ですけれども、まだ先がどうなるか分かりません。そういう中で民主派側にも何らかの手を差し伸べ、理解を得ていく。ミャンマーの国民とともにあり、彼らの目線で彼らのニーズに応える。そこに日本がコミットしている、関われているのは大きな意義だと思います」