“マニュアル”に沿って「狭く・浅く」近所に馴染んでいたか

ホラン千秋キャスター:
稲村さんは公安部にも所属されていたということですけれども、警視庁にとって、この容疑者とみられる男の身柄が確保されていたということで、どのような衝撃度をもって受け止められていたのでしょうか?

元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
私が現役のときから、顔を見れば名字がすぐにぱっと出てくるぐらい記憶に鮮明でした。私見としては海外逃亡、もしくは、もしかしたら亡くなっているのではないかという見立てを持っていたので、そのような中で自ら名乗り出るという形で発見されたのは、非常に驚きました。

ホランキャスター:
そして、今朝死亡ということが伝えられたわけですが、もし話を聞くことができていたとしたら、どんなところを聞きたいというふうに捜査関係者は思っていたのでしょうか?

元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
まずは桐島聡本人の支援者の有無だとか、組織的支援ですね。あとは、仮に海外に逃亡した履歴があれば、海外における組織と支援者だとか、もしくは国家的支援だとか、そういったものも気になります。

ホランキャスター:
最後「私はこういう者です」というふうに話したわけですけれども、そういった心理というのは、過去にもみられるものですか?

元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
過去に類似の事例があったかというのは明確には申し上げられないんですけれども、今回本人が自ら名乗り出たというところで、逃亡しきったというところの見せしめというか、そういった感情がもしかしたら含まれていたのではないかと思います。

日比キャスター:
連続企業爆破事件で負傷した被害者の家族も「罪の意識が出てきて本音を語ったのか、自己満足か分からないけど、もうちょっと長く生きて自分の言葉で事実を話してもらい、罪を償ってもらえたらよかった」と話しています。

この50年という長い時間、なぜ逃亡を続けることができたのか?元埼玉県警捜査一課の佐々木成三さんによりますと「家族や友人との接触を完全になくしたと考えられる。さらに、長期間逃亡を続けるのに最適な場所を見つけたのでは」ということです。

一方で、稲村さんのご指摘は「組織には『普通に生活しろ』というマニュアルがある。徹底した潜行活動を行ったのでは」。たとえば「近所付きあいは浅く・狭くが原則」など、そういったものを紹介というか、羅列しているマニュアルがあったということなんですよね。

元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
非常に有名なマニュアルで、「腹腹時計」というものなんですけれども、そのなかには今ご紹介いただいたとおり「近所付きあいは浅く・狭く」、一方で「近所の人間とは必ず挨拶をしなさい」と、そういった形でいかに日常生活に馴染むかというところが書かれています。

ホランキャスター:
となりますと、私たちが普段過ごしている日常のなかに、こういった人物が紛れていてもおかしくはないということですよね。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
そう考えると、またちょっと怖くなりますよね。でもよく約50年間も、身分証明書もなければ免許証も多分ないでしょうし、医療機関のあれ(保険証)もない。いくらマニュアルがあるとはいえ、それを50年間貫くというのはなかなか大変だと思いますけどね。

ホランキャスター:
だからこそ、支援者がいた可能性があってもおかしくないと。

元警視庁公安部捜査官 稲村悠さん:
そうですね。ただ、一つ大事な前提として、潜伏をしてゲリラ活動をまだ行う意思があったのか?もしくは本当に逃亡に徹したか?ここでだいぶ観点が変わるのではないかと思います。