キャッシュレス化が進み…令和の1円玉に価値が出てきた

実は最近、希少になってきている貨幣があることをご存じでしょうか?

それは1円玉。キャッシュレス化が進み、平成の終わりから令和にかけて1円玉の発行はほぼありません。平成2年(1990年)には27億枚を超える発行枚数でしたが、令和4年(2022年)はその5千分の1ほどの57万枚にとどまりました。文字通り桁が違います。「やっぱり絶対量が少ないものは、価値が高い」と林さん。実際、完全未使用品の1円玉を見てみると、平成2年は100円の価格ですが、令和4年のものは4千円の価格がついているそうです。

他にも希少な貨幣に、「エラー硬貨」があります。こちらも例を出すと、製造過程で誤って穴が塞がったりずれたりしてしまった5円玉や50円玉、模様を刻印する時に表と裏の模様がずれてしまった貨幣などがあります。エラー硬貨も価値がありますが、基本は「一品物」のため、オークションなどで個別に価格が決まっていきます。

エラー硬貨

想像をはるかに超えるコインショーの熱気 新規参入者も

ここで不思議に思うのは、どんなに希少であるにしろ、今の時代、誰が額面以上の価格で貨幣を買っているのかということです。

2023年11月に東京・大手町で開かれた展示即売会「東京コインショー」を筆者ものぞきましたが、想像以上の熱気と人出でした。ビルの一室が多くの人であふれかえり、お目当ての品を見るのもなかなか難しい状況。林さんによると、最近は小学生や中学生といった若い層の参加者も増えています。実物を手にすることで楽しさに目覚める人もいるそうです。

日本貨幣カタログは、毎年価格の変動があるので、72人(2023年12月現在)の組合員で手分けして算出したり、新しい貨幣が出たらページを追加したりしています。組合員は古銭や切手を扱う店を経営している人で組織されています。最盛期は150人以上いましたが、年齢を重ねて廃業し、やめる人も多いといいます。しかし、新しく参入する人も結構いるそうで、供給も需要もなくならないため、貨幣の額面以上の取引は今後も続きます。

希少な貨幣を求める人たちが希少になることは、今のところなさそうです。

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取材:TBSテレビ デジタル編集部・影山遼(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

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影山遼
TBSテレビ デジタル編集部
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®。元すみっコぐらし学園認定記者。名前の通り、暗いです。

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