そしてこんなデータもあります。年代・性別で見た梅毒患者の内訳なんですけれども、男性を見ると、大体どの年代も同じような割合。ただ女性に関して言うと20代が圧倒的に多い。また男性の患者数が女性の2倍以上というのもわかっている。そして大阪では若い女性患者が増加しているというデータもあるんですね。

---城戸先生の見立てですが、実は数年前から増えていたんだと?
「2000年代までは世界的にも梅毒というのはもう抑えられた終わった病気だと思われていました。でもそこから実は徐々に世界的に梅毒というのは全体で増加傾向でした。その増加傾向のときに誰が増加したかというと、男性間の同性愛者の集団。その集団の中で比較的増えていって、これが世界的に伝播してきました。日本ではそれが2015年ぐらいから状況が変わってきて、その2015年までは発生患者の多くが男性患者さんだったのですが、それから2015年以降グラフでもぐっと伸びていますが、徐々にその男性集団というところから、女性にもうつってきました。なので今は3分の1が女性、3分の2が男性と。そうすると一般の人にも多く感染する機会が増えてきたと。これが世界的に起きています。ではどうして先に男性の同性愛者の間で増加したかというと色々な説があるのですが、2000年まではHIVの治療があまりなかったので、活発な性活動というのが全体的に抑えられていたと。しかし今HIVというのが治りはしないけれど死なない病気になって、そこで性活動が全体的に増えてきて、その結果あまり安全ではないセックスというのが増えてきて、それが土台になって梅毒が増えてきたのではないかと一つは言われています」
---先生が今おっしゃった話で言うと、事実そういうデータがあるわけで、男性間の性交渉で感染が増えていったというのは大体2015年ぐらいまでということなんですか?
「そうです、2015年まで徐々に上がっていますよね。その間までは、その報告のほとんどが男性の報告でした。それが2015年16年から急増しているように見えますが、これが徐々に男性間の同性愛者の集団から、第1回目は性風俗の従事者、それからあまりそれとも関係ない一般の人にも拡大し、若い人に広がってきたという状況だと思います。HIVと梅毒であったら、梅毒の方が感染力が一般的には強いです。何故ならば、いわゆるオーラルセックスでも感染力が十分高くて、かなり気をつけて避妊具などを使用しないと、かなり容易にうつる感染症です」

---気づかないうちにうつっていたりとかするっていうのはあり得ることなんですか?
「無症状といっても日常生活では感染しませんから、そういう不特定多数なりのパートナーがいらっしゃる方でそのようなアンセーフセックスの経験があれば、それはいくらでもそういう可能性はあるということですね」

---これだけ継続した拡大傾向があるということは、不特定多数の人とお付き合いをしていなかったとしても、そういうことが起こり得る可能性っていうのは今後あり得るということ?
「おっしゃる通りです。これが今は漏れてきて、一般の集団にも感染が広がってきた状態ですから、そうすると自分はそういうこと関係ないと思っていても感染するのが性感染症の一つの重要な特徴ですね」

---例えば私は自分のことで言うと、年に1回必ずこういう検査をするというのを一つのルールとして決めていて、HIVも含めてですけれども、そういうときに性感染症の検査をするというのは推奨されていることだと思うんですが、知らないうちに感染している可能性もあるとすると、大体どれぐらいのペースで検査することを先生はおすすめしますか?
「もちろんどのような生活を送っているかは様々なんですけれど、ごく一般的に考えれば、頻回の検査はそれほどリスクが高くない人はあまり意味がないと思いますので。例えば今おっしゃったように1年に1回の、性感染症ではHIVとか梅毒は保健所などで匿名で無料でも検査ができますので、そういうのを利用するというのは非常に良いことかなと思います」