1966年、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で、一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、死刑が確定している袴田巖さん(87)の再審=やり直し裁判の第6回公判が1月16日、静岡地方裁判所で行われ、弁護団は被害者の遺体の状況をもとに「複数犯」説を強調しました。
【袴田事件再審公判ドキュメント/1/2/3/4/5】
<巖さんの姉・袴田ひで子さん(90)>
「気持ちはね、12月から続いているから別にあんまり変わりない5月22日に終わるっていうから、やっぱりうれしいホッとする早く終わってくれないかと思っている」
結審=審理の終わりが2024年5月下旬になる可能性が高まる中、姉のひで子さんは1日も早い無罪判決を願っています。
<滝澤悠希キャスター>
「第6回公判に向け、弁護団が法廷へとやってきました。長年、袴田さんを支え先日亡くなった、西嶋勝彦弁護士、今回からはその姿はありません」
2024年初めてとなった再審公判は弁護団長不在で始まりました。
弁護団は今回の再審公判であらためて、検察側が袴田さんの犯行着衣と指摘する「5点の衣類」について、ねつ造された証拠と主張しました。今回、その根拠としたのが、衣類の損傷状況です。
<滝澤悠希キャスター>
「午前中の審理で『5点の衣類』のうち、ねずみ色のスポーツシャツなどが示されました。スポーツシャツには非常に小さな傷がついていて、その場所を付箋で囲みまして、丁寧に確認していました」
弁護側はねずみ色のスポーツシャツの右肩の穴が1か所のみなのに対し、その下に着ていたとされる白いシャツには、2か所開いていたことなどを不自然と説明。ズボンについたカギ型の損傷部分と袴田さんのすねの傷が一致するという検察の指摘について、弁護団はすねの傷は逮捕された時にはなく、取り調べの際にできたもので、ズボンに残る損傷は、捜査機関によってねつ造されたものと反論しました。
鉄紺色のズボンの共布についても、事件後に袴田さんの実家で見つかったのは不自然で、家宅捜索をした警察官が一目見て、布切れが犯行着衣の共布と判断するのは不可解だとしました。さらに、このズボンが袴田さんが何度履こうとしても入らなかったのは、わたりや太もも部分のサイズが極端に小さかったためで、検察が主張する袴田さんが太ったため、ウエスト部分が引っ掛かり履けなかったという主張を否定しました。
今回の公判終盤、弁護団は犯人像について新たな見立ても展開しました。
<伊豆川洋輔記者>
「遺体には縄で縛られたような跡があり、犯行の状況から、袴田さん1人による犯行はありえないと、強い口調で論じました」
<袴田弁護団 小川秀世弁護士>
「(遺体の首に)縄がかかっている。腕にもかかっている。(遺体の周りには)縄がいっぱいあって、縄の燃えカスもある。だから、恐ろしい。縄の痕じゃない、縄がある」
再審請求審の段階で開示された被害者4人の画像を解析した結果、首や腕、足が縄などで縛られていることが判明したと指摘、検察側の寝込みを襲ったという主張に対し、弁護側は事件当時、4人は起きていて、縄などで縛られ、身動きが取れない状態で殺害されたとし、袴田さん1人で行える犯行ではなく、複数人による犯行との考えを示しました。
一方、静岡地検の奥田洋平次席検事は「確認する限り、ロープ痕とみられるものはない。ロープ痕に違いないという線上の痕が焼かれた後なのかどうか識別できるものではない」としています。
<巖さんの姉・袴田ひで子さん(90)>
「きょうは反論がしっかりできた。これは絶対勝ちます。もう勝ったようなものです」
裁判は17日も開かれ、弁護団は、取り調べのテープを再生する予定で、警察による自白の強要があったと訴える考えです。
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