日本経済にとって2024年は、「デフレ完全脱却」成るかを賭けた、転機の年です。

鍵となるのは、もちろん賃上げですが、本当の意味での『好循環』実現のためには実質賃金がプラスになることが欠かせません。

去年11月の実質賃金は3.0%減

10日、発表された毎月勤労統計によれば、2023年11月の、物価を考慮した実質賃金は前年同月比で3.0%の減少でした。

減少幅は10月の2.3%減少から拡大しており、失望させられる内容でした。

実質賃金のマイナスは20か月連続で、物価高に賃金が追い付かない状況が続いています。

「どこが好循環なのか」名目賃金の伸び悩みが明確に

より失望させられたのは、名目賃金の伸びが大きく鈍化したことです。

11月の1人あたりの現金給与総額は28万8741円と、前年同月比わずか0.2%の増加に留まりました。

プラスは何とか維持したものの、プラス幅は10月の1.5%増から急低下しており、23か月ぶりの低い伸び率です。

11月はボーナスなど特別給与が大きく減少しており、春に賃上げした分、こうした特別給与の支給が渋くなっている可能性がありますが、ひと月だけのデータでは何か特殊な要因があったのかもしれません。

そこで、少し長いスパンで見てみます。

日銀の政策委員会審議委員を務めたこともある慶應義塾大学の白井さゆり教授によれば、2023年4ー10月の名目賃金は前年比で1.4%の増加でした。

これに対して、前年、2022年の4月-10月の名目賃金は1.6%増で、やはり増加率は低下しているのです。

白井教授は「日銀は好循環が近づいているというが、名目賃金の伸びが鈍化しているのに、どこが好循環なのか」と、疑問を呈しています。