クリスマスイブに行われたGI「有馬記念」では、武豊騎手騎乗のドウデュースが勝利し、GI3勝目をあげました。また、このレースをもって引退となるタイトルホルダーの引退式も行われ、多くのファンが別れを惜しみました。どんな競走馬でもいつかは引退の時を迎えます。馬たちは、その後、どこに行くのでしょうか。

「馬のうんちを価値あるものに」表参道のおしゃれカフェが“馬ふん”にこだわる理由

2023年4月にオープンした「BafunYasai TCC CAFE」。東京・表参道の路地裏にあるおしゃれカフェですが、店名を漢字にすると「馬ふん野菜」となかなか強烈です。名前の由来は、“馬のうんち”からできた堆肥で育った野菜や果物を使った飲み物や料理を提供していること。なぜ馬のうんちにこだわっているのでしょうか。

山本高之代表(“Bafun”カフェを運営する株式会社TCC Japan)
「馬のうんちは馬が生きている限り排出するものだからです。それを価値あるものとして使うことは、馬の生き方の多様性につながると考えています」

ーー馬ふんと馬の生き方の多様性、どうつながるんですか。

「年齢やけがで人を乗せることができなくなった馬たちをどう活用するかというのは長年の課題です。

馬ふんが堆肥になり食物が育って、その食物を調理して提供するというサイクルを作ることができれば、馬は生きているだけで生産性を持つことができます。それを推進するために馬ふん堆肥をコンセプトにした店舗作りに至りました」

馬の生き方の多様性が必要だと感じる背景には、引退競走馬の厳しい現実があるといいます。

農水省の資料によりますと、競走馬は年間約8000頭が生産されています。しかし、すべての馬が競走馬としてデビューできるわけではありません。さらに、競走馬としての登録が「抹消」となる馬は中央競馬、地方競馬合わせて年間約1万頭いるとされています。

ーー引退した競走馬はどうなるんですか?

山本代表
「繁殖にあがれるメスの馬はある程度の数がいますが、種馬になれるオスの馬は本当に一握りで1%もいないと思います。乗馬クラブに引き取られる馬もいますが、その後をたどると行方不明になっていることもあります。割合的に多いのはペットフードなどになるケースじゃないかと思います

引退競走馬がセカンドキャリアに就くための十分な受け皿がないという現状があるのだといいます。この事実は、競馬に携わる人たちの間で長年「目を向けないほうが良い」とされてきたグレーな部分だったと山本さんは言います。

しかしいま、ファンの気持ちは変わってきていると感じているそうです。