6日に北海道で行われた陸上のホクレンディスタンスチャレンジ2022深川大会。この日までに2種目での世界陸上代表切符を獲得していた田中希実(22・豊田自動織機)が、日本記録を持つ女子3000mで、自身の武器であるラストスパートを見せ8分42秒66で優勝した。


“レースの半分である1500mとラスト1周の走り”をテーマに走ったという田中。前半はスローペースで進んだものの自身の言葉通り、中盤から加速、ラスト1000mは2分46秒、最後の1周も62秒台とスピードを上げた。自身が持つ日本記録8分40秒84に迫る好タイムだった。

レース後、田中は「日本記録はならなかったですけど、(8分)45秒を切ることは出来たので、最低限のレースは出来たかなと思います」と振り返っている。

父・健智さん
この記録について父でありコーチを務める健智さんは「記録を狙っていたのではなく、後半の1500mをどう走るかをテーマに掲げていた。それをしっかりやってくれて、世界陸上に向けては良い締めくくりが出来たかなと思います。走る度に調子が整っていくタイプですので、世界陸上でも一戦一戦大事にしながらラストにつながっていければ」と評価した。

レース翌日の7日、日本陸上競技連盟は16日に開幕する世界陸上オレゴン大会に出場する追加選手を発表。1500m、5000mで代表に内定していた田中は、女子800mでの代表入りも発表された。日本選手団最多となる3種目での代表が決まった。

これにより田中は16日から25日までの10日間、超ハードなスケジュールをこなすことになった。まずは大会初日の16日に1500m予選が行われ、翌17日に準決勝、19日に決勝が行われる。中1日を空けて21日に5000m予選、22日は800m予選、23日に800m準決勝、24日に5000m決勝。最終日の25日には800m決勝と、すべて決勝まで進出すると最大8レースだ。

サインを求められる田中
父・健智さんと臨む2回目の世界陸上は、10日間のうち8日間がレースという超過酷スケジュール。それでも田中は「私は走ることで発散することが出来るんですけど、父は見てるだけしか出来ない葛藤というか、苦しさがあると思うので、だからこそ、二人で色んなことを苦しんだり、知った今シーズンを晴らせるような、また新しい始まりの世界陸上に出来たらなと思っています」と力強く意気込んだ。

その後、9日にも兵庫県選手権(神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)の1500mに出場し、4分10秒88をマークした田中。「走る度に調子が整っていく」という父の言葉のように、出国直前までレースに挑んだ。田中は10日、世界陸上の舞台アメリカに向け出発する。

■田中希実
1999年9月4日生まれ、22歳。兵庫県出身、西脇工業高~豊田自動織機所属。
女子1000m、1500m、3000mの日本記録保持者。
2021年東京五輪で1500mと5000mに出場。1500mでは8位に入賞する日本人初の快挙を果たした。