◆声を上げた人がいたからこそ、世界が変わった
エメット・ティル少年のような男の子は当時たくさんいたはずです。ですが、母親のように訴えるには、当時大変な勇気が必要でした。いろんな脅しにも耐えながらの行動です。息子の死を無駄にさせないと声を上げたことで、結局これが1964年の公民権法の制定に繋がっていくんですね。
何が言いたいかというと、われわれは悲しみに包まれてしまったときに、閉じこもってしまいがちですし、そういう弱さがあるのが人間だと思うんですが、そこから立ち上がって、更に声を上げる人がいたから、今の日常があるということですね。誰かが声を上げたから変わったんです、いい方に。
昨年、初めて劇映画化され、いま日本で公開されています。その日本でも100年前の関東大震災のとき、あってはならない虐殺が起こりました。それは今年『福田村事件』という映画で描かれましたが、あれと時を同じくして今公開されているということに、人間の営みがゆっくりではあるけれども少しはいい方に向かっているのかなと思います。