北海道に暮らし、狩猟を行いながら、命に向き合う生き方を執筆や講演、狩猟に同行するツアーなどを通して伝えている猟師の黒田未来雄氏に、SDGs達成期限の2030年に向けた新たな視点、生き方のヒントを聞く。
【前編・後編の後編】
地雷被害の衝撃で商社マンからNHKディレクターへ。「大事なのは心の豊かさ」
――続いてお話していただくテーマは何番でしょうか?

黒田未来雄氏:
8番「働きがいも経済成長も」です。
――この実現に向けた提言をお願いします。

黒田未来雄氏:
「Life is Once(人生は一度きり)」。
――人生は一度きりだと思った黒田さん。元々は何をされていたんですか。
黒田未来雄氏:
三菱商事という会社で三菱自動車の車をアフリカに輸出するという部署に配属されて、営業をやっていたんです。
――商社に入りたかった?
黒田未来雄氏:
大学で語学を専攻していたこともあり、あまり自分の人生をまだ深く考えていない20代前半のときに世界を股に掛けるビジネスマンみたいなものにとりあえず憧れて、思った通りの世界を股にかけて大きなお金を動かすビジネスマンになったんです。
――アフリカにもすぐ行かされたのですか。
黒田未来雄氏:
何度も出張で。最初の出張でアフリカに行ったのがきっかけで、僕はその会社をやめようと思った。
――何があったんですか。
黒田未来雄氏:
僕が行ったのはアンゴラという国で当時内戦が終わったばっかりで、ようやくビジネスマンが入れるぞっていうときに、まず商社マンが切り込んでこいみたいな感じだったんですが、地雷がいっぱい埋まっているんです。人口が1000万人なのに地雷が2000万個あると言われていて。

億単位の商談を初めてまとめてものすごくうれしかったんです。事務所を出ると、アンゴラ人のお母さんが目の前にいたんです。多分地雷なんですが、両足がないんです。乳飲み子を背中にくくりつけて手だけでズリズリ這っていたんです。僕はそのときに本当に動けない衝撃で。アンゴラの国の現実をボンと見せられて、ものすごく高揚していた自分が一体何なんだこれはと。入社2年目のときだったんですが、悩んで、すごくいい会社ですごく楽しかったんですが、辞めて転職することになったんです。
――次の選択肢はどう考えたんですか。
黒田未来雄氏:
アンゴラという国がなんでああいうことになっているのか。ダイヤモンドも石油もあるし、日本から見れば本当に資源に恵まれた国なんです。けれども、旧ソ連とアメリカの代理戦争をずっとやっていて疲弊して、「気に入らなければ殺せばいい」、「なければ盗めばいい」というような殺伐とした社会が出来上がってしまったんです。そこで、経済とか資源とか物の豊かさで人間は幸せにはならなくて、やっぱり一番大事なのは心の豊かさだろうと思うようになったんです。自分が今大事だと思うことを、こうじゃないですかって人の心に伝えていく、訴えていくようなことを自分のなりわいとしたいと思うようになったんです。














