世界的にインフレが進んでいる。各国は金利を上げインフレにストップをかけようと動く中、日本は従来通りのゼロ金利政策を続行するという。日銀は金利を何故上げないのか?もしかすると上げたくても上げられないのだろうか?だとするとこの先、どうなるのか?専門家に聞いた。
■「国債の買い支え・ゼロ金利政策が限界にきているとみています」
日本の財政赤字の埋め合わせとして毎年大量に発行される国債。これを毎月5兆円規模で買っているのが日銀だ。ところが6月、突然日銀の国債購入額が16兆円に膨れ上がった。
この急激な“買い”の裏に何があったのだろうか…実はこの時期、海外の大手ヘッジファンドが日本国債を大量に売りに出していて、国債の価値を下げないように日銀が買い支えた結果だとみられている。ではヘッジファンドは何故日本売りを始めたのか?番組ではヘッジファンドのトップを取材した。
英ヘッジファンド『ブルーベイ・アセット・マネージメント』
マーク・ダウディング最高投資責任者
「世界中の中央銀行が金融緩和政策を次々とやめてきています。こんな中、ゼロ金利を続けているのは日本だけです。日本銀行が実施してきた国債の買い支え・ゼロ金利政策が限界にきているとみています」
日銀は国債が安値で売買されると金利が上がるため、高値で買い支えてきた。ダウディング氏はこうしたやり方に限界が近く来るだろうと思い今回の“日本売り”を仕掛けたという。
マーク・ダウディング最高投資責任者
「円安が1ドル130円まで進んだ時からこのポジションを取り始めました。円安が進めばインフレにつながることから日銀への政治的プレッシャーもかかってくると考えたからです。世論調査を見ると日本の国民の大半も物価上昇に対する政府の対策に不満を持っているようですし・・・。(中略)私たちは中央銀行と戦おうとしているわけじゃありません。日銀が数か月以内に自らの分析・判断で金融政策を修正すると予想しているだけです」
戦いを仕掛けているわけではないとしながらも、ヘッジファンドとしては、明らかにこのままでは日本はもたないので、日銀も各国に倣って金融政策を変更すると見越していた。しかし今回は、それ以上に頑なに日銀が金利上昇を嫌がったということだったのか。
経済評論家 藤巻健史氏
「これ、スキームとしては92年に世界的投資家ジョージ・ソロスがバンク・オブ・イングランド(イギリスの中央銀行)に仕掛けて、勝ったときと同じスキームなんです。中央銀行がいろいろ操作をすると“オデキ”大きくなる。中央銀行がいなければマーケットが微調整していくんですが中央銀行が規制をしてくると“膿がたまる”。それに針を刺して正常化しようとしているのがヘッジファンドで、ソロスはそれでイギリスの中央銀行に勝って大儲けしたんです。ヘッジファンドとしては仕掛けますよね。儲かったら大儲け。失敗しても儲からないだけで損はないですから」
結果、日銀は政策変更せず16兆円を投じてまたしても買い支えてしまった。ヘッジファンドの目論見は今回は外れ儲けられなかった。ヘッジファンドの目論見を外したといえばいいことのようだが、ヘッジファンドも次を狙うだけ。その時、まだ日本は同じことをできるのか。日銀は何故ここまでこだわるのだろうか?