ICC=国際刑事裁判所の赤根智子判事は、2023年3月、ウクライナ侵攻をめぐり、ICCがプーチン氏に逮捕状を出した際の判断に加わりました。

逮捕容疑は、占領地域のウクライナの子どもたちをロシアに移送したことが“国際法上の戦争犯罪にあたる”というものです。

逮捕状が出て以降、プーチン氏は国際会議への参加を見送らざるを得ないなど、外交政策に一定の影響が出ています。反発を強めるロシアは、5月、赤根判事らICCの判事3人を指名手配する報復措置に出ました。

赤根判事は、プーチン氏に逮捕状を出した経緯や意義、ロシアからの指名手配についてどう考えているのか。ニューヨークの国連本部でインタビューしました。(取材:23年12月6日)

逮捕の検討過程は「プーチンさんであろうが、他の人であろうが全く変わらない」

ーープーチン大統領に対する逮捕状を出される判断に加わっておられましたけれども、プーチン大統領個人に逮捕状を出されるということで、それはどういった経緯で、どういう意味合いがあるのか

ウクライナは、私達はシチュエーション自体と呼んでますが、私達のいるプリトライアル、予審部の担当になっていまして。

ですからICCの検察が誰かに逮捕状を出したいと思う時には、我々に逮捕状請求書が来るんですよ。

その段階で初めて、どんな逮捕状の事実になっているか、どんな証拠があるかということが分かるわけです。

私達はそういう段階で、2月でしたかね、2023年の2月に、逮捕状請求書と証拠をもらって、それを大体1か月弱ぐらい検討しまして、逮捕の理由と、逮捕の必要性があると。逮捕をめぐる「事実と証拠」を合わせたものとですね、それから「逮捕する必要性」の二つを検討して出したと。

ですから逮捕の必要性があるなっていうことですよね。証拠と事実から、ということです。

ーーその逮捕状を出されても、当然、まだ逮捕されてないわけですけれども。そういったことによって、どういった意味が?

裁判官なので、政治的な意味合いとかですね。将来プーチンさんがどうなるとかそういうことを考えて(逮捕状を)出すわけではないんですよね。

ですから出した結果としていろんな波及効果があったというのは聞いていますけれども、それは後で聞くことであって、(逮捕状を)出す時には、逮捕の必要性があるかどうか、事実の裏付けの証拠があるかどうかだけで判断していまして、これはプーチンさんであろうが、他の人であろうが全く変わらない検討過程になります。

逮捕状のニュースを聞いた時は「『あ、そうか』という感じ」

ーープーチン氏が逮捕されるという事態はなかなか想像しづらいんですけども、その辺りの可能性や、期待することは?

それも可能性なのでね。我々としては逮捕なんかできないと思って(逮捕状を)出すわけではないので。

日本の逮捕状なんかだと、有効期間7日間とかいう形で、更新しないとバリッド(有効)じゃなくなるんですけれども、ICCの場合は、基本的には
彼なり、彼女なりが生きてる間はずっとバリッドなので、どういう可能性があるかというのは、大体想像がつくかなと思いますけど。

ーー逮捕状が出ている状況の中で、どういったことを今、プーチン氏に求める?

いや、それもう、裁判官としてはありませんね別に。

ただ、みんな言われてることですけれども、ローマ規定に入ってる国というのは、そこの国に、もしそういう逮捕状が出ている人が行ったらば、逮捕する義務がありますので、それだけは皆さんにお知らせはしていますね。

ーーロシア側から赤根さんを指名手配するという、抗議の意味があるんだと思うんですけれども、そういったお話を聞かれてどう感じる?

私達、出すときから予想はしてましたよ。当然のことながら。

そういうことも含めて裁判官っていうのは何があっても中立で、かつ、我々の職務を全うすると、それを考えるだけということですし、逮捕状のニュースを聞いたときも、「あ、そうか」という感じでしたね。

ただ国内的には、敵に対して逮捕状を出したりとかそういう話は聞きますので、当然そういうことはあり得るだろうなっていうぐらいですね。

ーーそれによってヨーロッパとか例えば国連にいらっしゃることはできるんでしょうけれど、生活や業務に影響などは?

これは、ちょっとセキュリティの問題がありますので、ちょっと申し上げにくいんですよ。やはり気をつけてはいますし、いろんな手当もあります。

ですから、それはちょっと言うとですね、やはり自分だけではなくて、同じ様に、逮捕状を出されている他の人もいますので、それはちょっと勘弁していただきたい。

「裁判官は仮に1人が死んだとしても、いくらでも替えが利く」

ーー率直に恐怖というか、怖いなと思ったりはしないのですか?