■”黄金世代”で世界一になった経験、感じる世代交代


実は荒木、アンダーカテゴリー日本代表で女子バレー界史上初の世界一に輝いたメンバーでもある。2019年に行われた第20回女子U20世界選手権大会で日本はブラジル、トルコ、アメリカ、イタリアなど数々の強豪国を破り、全勝で史上初優勝を果たした。その時のメンバー12人中9人が今年の代表登録メンバーに名を連ねており、まさに”黄金世代”。中でも今年トップチームの日本代表で活躍を見せたのが石川真佑(23・フィレンツェ)、西村弥菜美(23・久光スプリングス)、山田二千華(23・NECレッドロケッツ)、そして荒木だ。

「今の日本代表の顔と言ったら(古賀)紗理那さんとかだと思うんですけど、U20で世界一を獲ったメンバーも活躍していて喜ばしいし、時代は変わるなって少しずつ実感してるところはあります。結果を残しているからこそ、トップチームの日本代表で世界とどれだけ戦えるかは自分でも気になっていたので今後がすごい楽しみです。そのメンバーでしっかり戦っていきたいなって思いはありますね」と語る。

日本女子バレーの未来はこの”黄金世代”が担っていくに違いない。そんな明るい未来を予感させた矢先、悲劇は起きてしまった。

■期待された中での代表離脱「人生で1番しんどくて、1番長く感じた怪我」

7月1日、VNLファイナルR直前のタイ戦。この日もスタメンで出場した荒木は第2セットの中盤、ブロックに跳んだ際にタイ選手の足を踏み、バランスを崩して転倒。痛みに顔をゆがめ、自力では立ち上がることができず、スタッフ2人の肩を借りてベンチへ。その後も車いすで会場を後にした。この右足首の負傷により、代表離脱を余儀なくされてしまう。期待されていた中でのまさかのアクシデントだった。荒木が離脱した日本はVNL7位、目標のベスト4には届かなかった。

怪我した瞬間をふり返り「せっかくここまで来て、このタイミングで離脱するかっていう。ひねった瞬間にその時の痛みとか音とか、もうこれ『プレーは無理だ』っていうのがその一瞬で分かって。これはすぐ復帰できるような怪我ではないなって。そういう考えが一瞬で頭を巡って『あー終わったな』って本当に思いました」。

2021年にも右膝外側半月板損傷でVリーグを離脱するなど、決して怪我が少ないほうではない荒木。しかし、今回の怪我は彼女にとって”人生で最も苦しい怪我”だったと語る。「2021年の方が長期離脱していたと思うんですけど、タイミングとかの関係もあって、今回の怪我が自分の中でも1番しんどかった。1番長く感じた怪我だったかなと思います。オリンピックやパリ五輪予選(OQT)を前に自分の中でもコンディションはうまく上げていた時だったので...。自分でも防げない怪我だったからより一層悔しいし、本当にタイミングが悪いなと感じていました」と悔しさをあらわにした。

そして言葉を詰まらせながら「正直、本当にタイミングが悪かったのもあって、正直バレーボールと向き合うことがリハビリ期間は特に一番しんどくて…」。どん底だった気持ちを新たに前を向かせたのは。

【後編】に続く