「12.65%」。これは、民間企業における男性の育児休業取得率です。政府は3年後までに30%に上げる目標を掲げていますが、達成に向けて必要なことは何なのか…カギは仕事の“見える化”と“任せる気持ち”にありました。

■育休取得のカギは仕事の“見える化”

2歳の長男の面倒を見ながら、生まれたばかりの娘にミルクを飲ませる男性。現在2か月の育休を取得中の磯江怜さん(37)です。


長男が生まれた時は育休を取得しなかった磯江さん。娘の出産を前に、初めて育休を取ろうと思ったといいます。そのワケは、妻のひと言でした。

礒江さんの妻
「この子の世話がプラスされるので、ひとりではどうしても無理かなと思って」

礒江さん
「状況的に1回、『無理ちゃうかな』と断っている、無理かもしれないと。誰にも相談していないけど。(妻は)明らかに落胆していたので、本当に無理かどうか(会社に)1回聞いてみようと思って」

「ダメ元」で会社に相談したところ、「あっさりOK」。背景にあったのは、磯江さんの会社「ウィルオブ・ワーク」の意識改革でした。

遡ること1か月前。この日は育休前、最後の出社日。営業部の部長職を務める磯江さんは業務の引き継ぎを行っていました。
すると話題は、磯江さんの育休のことへ。


磯江さんの上司
「僕の所に(相談に)来た時は若干言いにくそうな感じもあったよね。すごくタイミング置いて、『ちょっといいですか…』みたいな感じできたよね」

礒江さん
「もちろんありましたよ。『何考えてんねん』と思われる可能性もなくもないというか」

礒江さんの上司
前例がないんでね」

実は、ウィルグループ全体における男性の育休取得率は、直近3年間で約5%。社内調査によると「育休取得に後ろめたさを感じる」との回答が、約34%に及んだといいます。

ウィルグループ 企画労務部長
「自分が取ることで周りに対しての業務上の迷惑、負担をかけてしまうということに対しての後ろめたさ。極論、自分じゃないとできないとか、自分じゃないと回せないと思っているのは当人だけ。いかに周りを巻き込んで協力を促していくか」


そこで取り組んだのが、磯江さんが抱える業務の“見える化”作業。内容や頻度など細かな部分まで約3か月かけて、チーム全員で共有しました。

礒江さんの部下
「本来もしかしたら僕たちがやらなきゃいけないことを磯江さんが全部やっていただけで、それをようやく権限委譲というか任せていただけた期間だった」
「お互いが120~130%やってカバーしようと(意識が)みんなで自然に出てきた」