「善人だった私は、犯人に明確な殺意を持った悪人の予備軍となりました」
――母親の意見陳述に続いて、結花さんの姉の意見陳述の書面が、代理人を務める女性弁護士によって読み上げられた。
妹は、私が漫画を又貸ししたのを気に入って、絵を描き始めたようです。大学のころ「アニメーターになる」と言っていた妹は、見事京アニのアニメーターとなり、素直にすごいと思いました。自慢の妹でした。
事件の日、両親より先に現場に到着すると、現場は焦げ臭いにおいがして、警察の黄色いテープをくぐると、妹がまだ見つかっていないこと、中にまだ多くの人が取り残されていることを聞きました。私は、焦げ臭いにおいに、人の焼けているにおいも混ざっているのだと気づき、血の気がサーっと引きました。
私は善人だった妹を失い、善人だった私は、犯人に明確な殺意を持った悪人の予備軍となりました。作品を作り続け、多くの人を元気づけてきた人の命を奪うことは、普通の殺人の範疇に値しないと思います。多くの人の魂を汚した犯人は、万死に値すると思います。
妹が無理してやっと叶えた夢が絶たれた原因はなんなのか。被告人がどのように罪を償い、どう命を終えるか知りたいのです。判決がどれだけ理不尽であっても、私はそれを刻み付ける覚悟があります。法律家、裁判員の皆様によって、正しい判断がなされることを願っています。