専門の医師が考える「処方箋なし」のメリットとは?

全国に先駆けて岡山県でオンライン診療を使い、薬局での「アフターピル処方」のプロジェクトなども進めてきた上村医師は、この試験販売に前向きな姿勢を示しています。

(ウィメンズクリニック かみむら上村茂仁医師)
「今の現状だと『婦人科に行かないともらえない』という現状があって、それだとやはり敷居が高いんですよね。特に若い子は婦人科に行ったことがないんですよ」

「病院に行くのが嫌だから、緊急避妊薬をもらいたかったけどもらえなかったとか、人工妊娠中絶で来られた方が、緊急避妊薬を知っていたんだけれども、婦人科に行くのがどうしても(抵抗がある)ということで、もらえなかった方が多数いらっしゃる」

「その部分を軽減する、気楽に緊急避妊薬をもらえるということを考えれば、非常に大賛成ですね」

上村医師が指摘する「懸念すべき3点」

上村医師は、購入への敷居は低くなる一方で、「懸念する点」もあると指摘します。

(ウィメンズクリニック かみむら上村茂仁医師)
「緊急避妊薬を薬局で出すことによって、一つは(避妊具をつけずに相手の同意なしに性行為に及ぶなどする)犯罪や、薬の転売にならないかということ」

「また2つ目は、緊急避妊薬は100%ではありませんから、妊娠をする可能性があって、それを見逃してしまうのではないかということ」

「3つめは、『性被害や性犯罪の被害者の方を見逃してしまうのではないか』ということです」

試験販売の結果、処方箋なしでの販売が広がることになるのか。多くの人が動向を注視しています。

【解説】
(取材した杉澤眞優キャスター)
アフターピルの販売というのは、海外ではもう既に「薬局で薬剤師が処方箋を出して販売する」というのが始まっているんですよね。

(コメンテーター 春川正明さん)
日本はこういった性教育に関して、遅れているところがあるという印象を、日頃、私達の生活の中からも受けることって多いですよね

外国では、もう90カ国以上で「処方箋なしで薬局で安く買える」ことになってるので、日本の取り組みを世界的に見ると、すごく遅れてるんですよね。

(取材した杉澤眞優キャスター)
今回そうした中で、日本で試験的な運用販売が始まったわけですが、大事な視点は?

(コメンテーター 春川正明さん)
大事なのは、女性が「自分の性のあり方について自分で決定できる権利」ですね。例えば「子供を産む・産まない」とか「妊娠する・しない」とか、子供を産むとしたら何人ぐらい産むとか、「女性自身が自分で決める権利」だという視点が大切ですよね。

さらに課題は、この背景として日本の性教育の遅れですよね。「日本の性教育の問題点」とよく指摘されるのは、「歯止め規定」というのがあって、中学の学習指導要領では「妊娠に至る経過を教えない」ということになってるんですよね。

これもやっぱり世界的に見たらすごく遅れているので、「本当の性教育」ということも背景事情としてはちゃんとやった方がいいんじゃないかなと私は思います。