旧ジャニーズ「性加害」問題 news23聞き取り調査

小川彩佳キャスター:
news23を担当するTBS報道局の黒岩亜純部長を交えて、news23としての検証、今後について話します。

藤森祥平キャスター:
今回のTBSの社内調査とは別にnews23では2000年頃からの歴代プロデューサー8人に聞き取り調査を行いました。

ジャニーズ事務所からの圧力を感じたことはあったか、忖度したことがあったかなどを聞いたところ、忖度が「あった」と答えた人はいませんでした。

そのうちの1人は「社会問題を先取りしていく感性が足りていなかった。忸怩たる思い」と話しました。

かつてnews23ディレクターだった黒岩部長は当時を振り返ってどこに問題があったと考えますか。

TBS報道局 黒岩亜純
忖度という問題以前に男性から男性への性加害ということへの意識が本当に欠如していたと思います。それが週刊誌報道で、そういう世界の話だと見てしまったこと自体も問題だと思います。

BBC放送後のnews23は…

藤森キャスター:
2023年に入ってからはどうだったのか振り返ってみます。
3月7日にイギリスの公共放送「BBC」が取材をもとにドキュメンタリー番組を放送しましたが、TBSはBBCの報道を引用する形では放送しませんでした。

4月12日に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが記者会見を行いました。ジャニー喜多川氏による性加害を公の場で告発する初めての会見でしたが、TBSはこの会見の情報を把握できませんでした。取材カメラを出すことができず、ニュースとして取り上げませんでした。ここに大きな反省点があります。

news23のプロデューサーは、この時点ではジャニーズ事務所側などへの裏付け取材が足りていないという番組内からの声もあり、結局この時点で放送には至らなかったと話しています。この点を振り返ってどうでしょうか。

TBS報道局 黒岩亜純:
BBCの報道があった時点でもっと感度を高めて本格的に取り組もうとしていれば、このような状況にはなっていなかったと思います。カウアンさんの会見の後、何とか情報収集して証言を得て、取材をすすめました。中堅・若手の記者が一生懸命取材をしましたが、時間がかかってしまい、1か月かかってしてしまいました。

その後、番組では実態を知る関係者の取材を始め、放送のタイミングを探っていた中、4月21日に、ジャニーズ事務所が取引先に「問題がなかったなどと考えているわけではない」などと記した文書を送っていたことが明らかになったことを受け、その日にnews23でTBSとして初めて性加害問題を放送しました。

その後、5月11日、news23ではカウアンさんや橋田康さんなど、複数の元ジャニーズJr.のみなさんの被害の訴えなどを取材し放送しました。ジャニーズファンの有志が事務所に署名を提出するタイミングでの放送でしたが、結局3月のBBC報道から時間がかかってしまいました。

小川彩佳キャスター:
私も番組スタッフの1人として、BBCの報道やカウアンさんの会見を受けて、何か放送に繋げることができないのかという議論を重ねてきましたが、結果として放送に至るまでに時間がかかってしまった、速やかに放送できなかったというのが全てだと思っています。

その間、被害を受けた方々や、退路を断って告発をなさった方々を失望させるような時間を生じさせてしまいました。これは猛省しなければならないと感じています。

また、ジャニーズを巡る問題の放送というのは、社内調整が非常に大変だという積み重なって固定化した意識が大きな壁となっていたことも事実です。報道する者としての責任を改めて自覚しなければならないと痛感しています。

BBCの報道を受けて、ここまでの流れ、橋田さんはどうご覧になっていましたか。

ジャニー氏の性加害を告白 橋田 康さん(38):
僕が初めて性加害の問題を告白したのが5月頃で、告白してからすぐに記事化したんですが、取材を受けている中で初めてカウアンさんのことやBBCの報道を知りました。

性被害後、事務所に在籍していた期間もありましたし、事務所をやめてから告白するまでの期間も被害を自分の中にしまって表に出しませんでした。被害を告白していたら救われた人も苦しむ人も少なかったかもしれないですし、変わったことがたくさんあったかもしれません。そういった意味では僕自身も行動が遅かったということは当てはまると思います。

ただ、「報道のプロ」という点では、BBCの放送から1か月かかってしまったっていうところは繰り返してはいけない、変わっていかなければいけない部分かと思います。

こうした問題が起きたときに同じような時間がかかってしまうことのないように、背負い続けてほしいと思います。僕ももっと早く踏み出せていたらと思うところは背負い続けたいと思いますので、背負い続けながら真摯に向き合い続けて欲しいと心から思います。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:
私も長くジャーナリズムの世界に身を置くものとして、この問題に声を上げることがなかったということは非常に反省しなくてはいけないと思っています。

その上で、今回のTBSの調査について2点申し上げます。
1点目は、人権感覚や感性が麻痺していたということでしたが、普段、他の問題では人権感覚が研ぎ澄まされているスタッフたちが、なぜこの問題では麻痺してしまったのかという踏み込みがいまひとつ足りませんので、今後もTBSには検証を続けてもらいたいと思います。

2点目は、構造的な問題です。当初はTBSが芸能事務所に対して発注するという強い立場で、注文をつけたりして起用してきたと思いますが、だんだん芸能事務所の方が強くなって、いつの間にか「このタレントを使うと視聴率がとれますよ」というように、何となく芸能事務所、プロダクションに主導権が移ってしまった。それが何となくものを言いにくい雰囲気を醸成してきたと思います。

報道機関、メディアとして、テレビ局にはドラマも報道もありますし、外部で制作する部分もあると思います。お金も手間もかかりますが、社内にきちんとジャッジする人、目利きの人を作ることを怠ってはいけないということが、今回の非常に大きな教訓だと思います。こうしたことを怠ると、また同じように業界団体が力をつけてテレビよりも大きくなって「怪物」になってしまうということを肝に銘じて、改善を目指してもらいたいと思います。