20年はJP日本郵政グループ、21年は積水化学、22年は資生堂と、本命チームが存在した。今年は積水化学が本命と言われていたが、大会が近づくにつれて上記3チームが3強と言われ始めた。
女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝が11月26日に、宮城県松島町をスタートし、仙台市にフィニッシュする6区間42.195kmのコースに25チームが参加して行われる。前日の25日に監督会議が行われ、区間エントリーが決定した。
資生堂が世界陸上10000m代表で、5区で2年連続区間賞中の五島莉乃(26)を1区に起用。先行策をとってきた。それに対して優勝候補筆頭の積水化学は5区の新谷仁美(35)、6区の森智香子(31)で逆転を狙う布陣。JP日本郵政グループは3区の廣中璃梨佳(23)の突出に命運を託す。

五島の1区参戦 独走させない、と日本郵政監督

資生堂が連続区間賞中の5区起用と思われた五島を、1区(7.0km)に配置してきた。資生堂は昨年も、1区の木村友香(現積水化学)で区間2位を100m以上引き離した。その再現を狙った選手起用である。

「駅伝は流れが大切。追う展開になると難しくなりますから」と青野宰明監督。「木村は移籍しましたが、五島なら木村以上に走れます。(前回2区区間賞選手も引退し)戦力的には昨年よりも多少ダウンするので、先行する展開に持ち込みたい」

ライバルチームはいかにして、五島と小差にとどめるか。五島の独走を許しても、1区7km全体で力を出し切ることを考えるのか。それとも五島に付いて行く方が、差を少なくできるのか。

JP日本郵政グループは19、20年の2連勝時に2区を走った菅田雅香(22)を起用。練習では廣中に次いで走れているという。「ウチは五島に付いて行きます」と高橋昌彦監督は明言した。

「昨年の木村選手も、ウチの廣中が独走した20年も、最初の直線で差が30mくらい開きました。そうなると第2集団の先頭に位置した選手は、引きたくなくなって(ペースメーカーにさせられることを嫌って)、躊躇してしまう。だから最初の1kmを付いてしまえば、独走できなくなるんです」

その走りを実行した場合、力の差があると終盤で大きくペースダウンし、最悪ブレーキをして大差がついてしまう。そのリスクを取るかどうかの判断を、走っている最中の選手にさせるよりも、指導者が決めた方が、覚悟を決めて思い切って付くことができるかもしれない。

第一生命グループもアジア選手権10000m優勝の小海を、1区に起用してきた。日本郵政同様に、五島に独走させたくないと考えているだろう。ワコールも東京五輪10000m代表だった安藤友香(29)で、3区の柳谷日菜(23)まで上位争いに加わりたい。

積水化学は直前に田浦英理歌(23)の起用を決めた。10月に5000mで自己記録を大きく更新し、上り坂にも強い。野口英盛監督は「去年の50秒差はやられすぎ。20~30秒差で行けたら」と田浦への期待を話した。

プリンセス駅伝1区区間賞の樺沢和佳奈(24、三井住友海上)、大森菜月(29、ダイハツ)、アジア選手権代表だった川口桃佳(25、ユニクロ)らもスピードを武器とする。五島が序盤から独走するのか、他の選手たちが五島に付いて行くのか。1区の焦点はそこに絞られる。

2区は代表対決か、新人対決か

2区(4.2km)は積水化学の大物ルーキー、山本有真(23)の走りが最大の注目ポイントとなる。7月のアジア選手権5000mに優勝し、8月の世界陸上ブダペスト、10月の杭州アジア大会にも出場した。名城大4年時の昨年は15分16秒71と日本人学生最高記録もマーク。野口監督は「1区で20~30秒差で行けたら、2区の山本でほぼほぼ追いつける」という。

資生堂2区は移籍加入した井手彩乃(24)で、5000mで15分27秒98を持つ。今季は好記録で走っていないが、良いときの状態に戻っていれば山本に負けても10秒程度にとどめられる。

日本郵政も新人の牛佳慧(23)を起用してきた。夏になってどんどん調子を上げ、練習では菅田に先着することもあるという。ユニクロは世界陸上1500m代表だった後藤夢(23)で、4.2kmの距離に対応できれば、1区の川口と2人で上位争いに加わることができる。

注目したいの天満屋の立迫志穂(19)で、プリンセス駅伝はエース区間の3区を任され区間6位と好走した。1区の谷本観月(28)はMGC後も好調で、多くの選手が五島に付いて後半でペースダウンすれば、谷本が粘りの走りで上位に浮上しているだろう。
2区の攻防が3区の流れに影響を及ぼしそうだ。