プロ9年目の今シーズン、2試合連続完封や3年連続の二桁勝利など、着々と成長の足跡を残した西武の高橋光成(26)。「今までで一番手応えのある一年。球速アップも身になってきた」と語る背景には、数年前から取り組み始めた“あるトレーニング”が関係していた。
「このオフ、週2で“南青山合宿”をやってるんです。野球の練習よりきついですよ」
侍ジャパンがアジアの頂点に立った11月。季節外れの半袖姿で向かったのは、南青山の閑静なショッピング街にあるスタジオだった。そこで高橋は、トレーニングウェアの色が変わるほどの汗を流し、“ピラティス”に励んでいた。
海外ではハリウッド女優や、プロゴルファーのタイガー・ウッズ(47)もトレーニングに取り入れているというピラティス。体についてしまった癖を直し、筋肉をコントロールして使えるように、背骨や骨盤の動きにフォーカスしたエクササイズだ。「僕ここに来てなかったら、いつか怪我して投げられてなかったですよ」と今では欠かせないルーティーンになっている。
高橋が始めたのは今から2年前。体を柔らかくしたいという目的でトレーナーに紹介してもらった。そこで運命的な出会いとなったのが『ピラティスアライアンス』でインストラクターを務める森畑一美先生だ。当時の高橋について『全部だめで。筋力はあったけど、動きはぐらぐら。よくこの体で投げてたね』と思い浮かべる。
関節一つ一つへの意識や、ボールを投げるために必要な筋肉の動かし方。身長190cm、105キロの恵まれた体格も、使い方を知らなければ意味がない。この2年間、宮古島自主トレへの招聘や月2回ペースの通い、登板日には球場で観戦してもらいフォームのチェックなど、一から体を見直した。その中でも一番変わったのは『胸が開いて、背骨が反れるようになってきたこと』だと森畑先生は話す。
この変化がピッチングに何をもたらしたのか。高橋は答えた。「伸張反射といって、速い球は筋肉が伸びて縮む動きでスピードが上がる。胸の可動域がないと筋肉が伸びないから、それがこの2年で伸びてきて球速が上がった」と予てから目標にしていた球速アップに繋がったという。「ピラティスをやる、やらないじゃ全然違う。やっと体の使い方がわかってきた」と成果を実感。それは数字を見ても一目瞭然だ。146キロほどだったストレートの平均球速は、この2年で約4キロアップし、150キロ台に到達。最速も158キロと自己ベストを更新した。
「山本由伸(25)だってあんな小さいのに球が速いじゃないですか。あれは体の使い方なので。僕も腕を振り切れたら160キロいけます」と大台は近くに見えている。
“可能性”だった2年前から、“確信”に変わった今。節目のプロ10年目に向けて、高橋光成はきょうも汗をかき続ける。














