いま全国でバスの運転手が1万人不足していると言われていて、路線バスの廃止や減便が相次いでいる。猛烈な逆風にさらされるバス事業者は、女性運転手の採用強化など新たな取り組みも進めている。
バス運転手不足で路線廃止や減便も…

愛媛県今治市や新居浜市など4市の路線を担うせとうちバス。運営する瀬戸内運輸は、創業107年の老舗バス会社で、年間およそ88万人が利用している。これまで地域の足として26路線のバスを運行してきたが、先月1日今治市内を走る三つの路線の廃止と、49便の減便を行った。
瀬戸内運輸では、ここ10年で、運転手の数が30人減少しているという。

瀬戸内運輸 営業課長 藤田晋平氏:
路線バスは赤字です。高速バスの収入や、貸切バスの収入を赤字のところに当てて、何とか維持している状況です。今後も運転手不足というのもあって維持していくのが困難になってくると考えています。
今回路線が廃止された地域では、今治市がバスの代わりとして、事前に予約をして、複数人で利用できる乗り合いタクシーの運行を始めたが、利用方法に戸惑っている住民の声もある。
運転手不足の背景にあるのは、バス運転手を取り巻く労働環境だ。
国土交通白書によると、バス運転手の労働時間月193時間で、全産業の平均に比べて1割長く、年間所得額は399万円で約2割低い。
また、運転手の平均年齢は53.4歳で、この10年で5歳上昇。2030年には3万6000人の運転手が不足するという試算も出ている。

関西大学 経済学部 宇都宮浄人教授:
今のバス事業は、民間任せでやってきた。そうなると何が起こるかというと、儲からない。そうであれば、サービスを削るか、人件費をカットして、収支を合わせにいくしかなくなる。その結果が非常に悪い労働環境に繋がっていく。今までのような「ビジネスで行政を助ける」ではなく、しっかりと行政が自分たちの町・地域や将来に向けて、バスという社会インフラに投資をする。
深刻な運転手不足に苦しむ中、バス会社の間でも採用活動を強化し、攻めの姿勢に転じる新たな動きが広がっている。