熱海土石流災害から1年を前に、「避難者の暮らし」について考えます。いまだに132世帯235人が避難生活を余儀なくされている中、伊豆山に「戻る」「戻らない」さまざまな考え方の人がいます。「避難者の今の生活」にカメラを向けました。
警戒区域に住んでいた避難者が、1週間前に撮影した自宅の様子です。あちらこちらに広がる大量の土砂。土石流災害からまもなく1年が経つ今も、悲惨な被害の様子が残っています。
<太田滋さん>
「なんでこんな風になってしまったんだろう」
自宅の映像を撮影した太田滋さん(65)です。熱海市伊豆山地区で、およそ30年、レモンなどを栽培してきました。
土石流の被害に遭い、神奈川県湯河原町に避難していますが、生まれ育った伊豆山に戻ることを望んでいます。
<太田滋さん>
「ほかのところに住むことは考えていなかった。のんびり暮らせる、せかせかしていないところが(伊豆山の)魅力」
先祖代々受け継いできた土地をいずれは、同じく農家を目指す息子に譲り、家族でもう一度、伊豆山に住みたいと考えていますが、「伊豆山が被災前の姿に戻るのは難しいのではないか」とも思っています。
<太田滋さん>
「お互いに『考えていること』『していること』がわからないから、その関係が不安。どんどん人も少なくなってしまうのでは」
熱海市が、6月22日に明らかにした避難世帯への聞き取り調査の結果によると、伊豆山に「戻りたい」と考えている人はおよそ5割。残りの5割は、「戻らない」もしくは、「考えがまとまらない」などと回答しています。
<関澤浩さん>
「こっちの生活はもうだいぶ慣れた」
熱海市が用意した住宅で避難生活を送る関澤浩さん(55)も伊豆山に戻るか悩んでいます。
<関澤浩さん>
「戻りたい気持ちもないことはない。愛着もあるし。こちらの方で落ち着いて暮らすのもありで半々」
関澤さんが帰宅を迷うのには理由があります。現在の避難先の周辺には、スーパーやコンビニもあり、生活に不自由はありません。
<関澤浩さん>
「生活必需品を買える店も近くにあり、職場も前に住んでいたところより近くなった」
また、住んでいた伊豆山が本当に安全なのかと心配しています。
<関澤浩さん>
「今の状況では、不安材料もぬぐい切れていないし、土石流の部分で安全が保障されていない」
熱海市によると、こうした利便性や安全への不安を理由に伊豆山に戻ることをためらう避難者も一定数いるという事です。
それでも、伊豆山に戻ることを希望している太田滋さん。警戒区域内の自分の土地に妻と二人、ひまわりの種をまいています。警戒区域に一時帰宅した被災者が花を見て、少しでも明るい気持ちになってほしいと願いを込めています。
<太田滋さん>
「何かしら種をまかなければ芽は出ない。どこでも花は咲くから、いつまでも苦しいわけじゃない」
住民たちがいつか示されなければならない、伊豆山に「戻る」「戻らない」の決断。太田さんは、周りの住民の選択のため、行政が細かく情報提供をすることが大切と話します。
<太田滋さん>
「(行政に)納得できるような情報を出してもらって、(戻る戻らないを)自分たちで選択する。『土石流で自分の人生壊された』ではなく、これをきっかけにどういう風になれるかという選択でもある」
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