「ドイツでは一線を越えてはいけない部分だ」
イスラエル支持のドイツ国内で今月4日、大規模なパレスチナ擁護のデモがあった。参加者の中にはドイツの左派政党やドイツ人の若者が主催のものもあれば、アラブ系が中心のデモも起きている。市民は今、イスラエルとパレスチナの問題をどうとらえているのだろうか…。

「現時点の中東紛争は悲劇だと思う。でもイスラエルはいかなる敵からも自分を守る権利があると思う。(――親パレスチナのデモについては?)ドイツにはデモの権利があります。なのであってもイイと思いますが、戦争を崇拝するようではいけないし、反イスラエル主義も反ユダヤ主義もいけないと思う」

「私は親パレスチナの人々の怒りは理解できる。一般市民が攻撃されているわけだから…。でも反ユダヤ主義がまたドイツに来るのはドイツにいるユダヤ人たちには何の責任もないわけだからダビデの星を壁に描いたり、反ユダヤ的発言をすることに意味が無いと思う」

「私はフランクフルト・アム・マインで学校に通った。そこではドイツ人は1%で、あとはイスラムの人たちだった。私はイスラエルの人たちに同情する。私は学校でイスラムの人たちに毎日暴力を受けた“だけ”だったが、あの文化と関わると時々戦う覚悟が無いと平和に暮らせないことが理解できる」
続いて老夫婦に聞いた。

夫「私たちには何もできない」
妻「公で言うこともあまりできない。何が実際起きているかもよく理解できない」
夫「イスラエルが自己防衛するのは当たり前のこと」
妻「(親パレスチナデモについては)それについてはノーコメント」
夫「パレスチナ人以外が参加してるので驚いた」
25人に声をかけたが、答えてくれたのは9人。質問がイスラエルとパレスチナのこととわかると回答を避ける人が多かった。
親イスラエルか親パレスチナかを明確に示すのは、一般市民には難しいだろうと話すのは、ドイツの大手新聞社のハーン記者だ。

『南ドイツ新聞』 トーマス・ハーン記者
「ドイツ社会は反ユダヤ主義のテーマになるととてもセンシティブなんだ。イスラエルのついては自由に話すことができる。だが反ユダヤ主義つまりユダヤ人憎悪・・・、彼らがユダヤ人だからと言ってユダヤ人を破壊することへの弁護は、ドイツでは一線を越えてはいけない部分だ。ドイツ国内で語ることが難しいのはそれがどのようにでも受け止められる面があるから…。反ユダヤ主義者だと言われてしまうことが簡単に起こりうる…。そんなつもりじゃなかったとしても…、ただの不注意だったとしてもね」
ドイツでは反ユダヤ主義の活動は刑法で罰せられる。3か月以上または5年以下の懲役と決して軽くない罪だ。だがここ最近だけでユダヤ教のシンボルであるダビデの星に落書きするなど反ユダヤ主義的事件は200件以上起きている。
一方で言論の自由、表現の自由が保障されているドイツでも反ユダヤに抵触する発言には慎重にならざるを得ないという。

翻訳家・エッセイスト マライ・メントラインさん
「発言は難しいです。今日私も冷や汗かきながら話している部分もあります。ドイツの中の反ユダヤ主義が色んな方向からきてる。極右はナチス信仰だからわかりやすいんですけれど、極左の反ユダヤ主義っていうのもある。それはパレスチナ問題を意識して(ユダヤがパレスチナを)虐げてるのは良くないよねってイスラエルを悪く言う。もう一つ、今ドイツが一番困っているのは、移民による反ユダヤ主義なんです。2015年の移民危機でたくさん入ってきた。アラブ圏からドイツに入ってきた沢山の移民の中に文化的背景もあって、一部ですよ、一部の人の中にユダヤ人が悪いんだっていう意識がある。それが今回みたいなことがあると(デモなど)声を上げる。犯罪行為に走る…。それとドイツ人の中に今も残る反ユダヤ主義。“ユダヤ人は不当な方法で物を入手していると思うか”っていう調査があるんですけれど、そう思う、ややそう思う合わせて3割の人がイエスって答えてるんです。」
ネタニヤフ政権が強硬な姿勢を続ければ続けるほど、“反ユダヤ主義”が頭をもたげる可能性が高くなることは間違いなさそうだ。
(BS-TBS 『報道1930』 11月6日放送より)














