ハマスによるイスラエル攻撃勃発からわずか5日後、先月12日ドイツ連邦議会でショルツ首相は「我々はイスラエル側に立つ。イスラエルの安全を守ることはドイツの国是だ」と述べた。その5日後には自らイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相に直接その思いを伝えた。ホロコーストへの贖罪からイスラエル擁護は当然とするドイツ。果たしてその思いはドイツ人全体の本音なのだろうか…。ドイツ人の声を聞いた。
「反ユダヤの思想は戻ってくる」
第2次世界大戦下、ナチス・ドイツによって行われたユダヤ人大虐殺“ホロコースト”。その反省からドイツではホロコーストが無かったと主張したり、ユダヤ人排斥などを主張したりすることは禁じられている。また教育でも15~6歳で第2次世界大戦とホロコーストを学ぶことが必修で、強制収容所やナチス記念碑の訪問も必須だ。
スタジオには様々な分野で活動し“職業はドイツ人”を自称するマライ・メントラインさんを迎えた。彼女もまた、歴史の授業で1年間第2次世界大戦を学び、国語の授業でアンネ・フランクを全部読んでみんなで話し合ったという。
翻訳家・エッセイスト マライ・メントラインさん
「ドイツの歴史の中でもホロコーストは一番の黒歴史なんですね。これをいけないということも大事なんですけれど、何が起きたのか、何故そうなったのかをちゃんと学ぶことが大切なんです。簡単に“ナチスが悪かった”で済ますと過去の話になっちゃう。そうではなく国民が何故それを許してしまったのかまで学ぶのが歴史の授業。例えばナチスは戻ってこないですけれど民主主義の敵、反ユダヤの思想は戻ってくる可能性がなくはないので、今の私たちがそれを見抜く必要がある…っていうのが教育のポイントなんです」
ドイツの憲法、ドイツ基本法第1条には『人間の尊厳は不可侵である。これを尊重して保護することがすべての国家権力の義務である』とある。“人権”を第一に据えたこともホロコーストへの反省あってのことに違いない。

翻訳家・エッセイスト マライ・メントラインさん
「ドイツの戦後歴史の中でナチスを徹底的に否定して反省することを外交カードとして利用してきた。国益につながるから…。でもそれとは別にきちんと授業で教える。でも教え方もあって…、今では“ナチスの話もういいよ”とかってなっちゃう。なのでドイツ社会に反ユダヤ主義まったく無いかっていうとそんなことないんです」
イスラエル支持がドイツの国是という考えは確かだとマライ・メントラインさんも言うが、国是の意味合いが政権によって異なるという。

翻訳家・エッセイスト マライ・メントラインさん
「メルケルさんの時代でもイスラエル守るのが国是という言い方はしてたんですけど、イスラエルを守るのはドイツの歴史から言って責務なんですが、イスラエルがやること全て支持かっていうとそんなことないよってやんわり言ってた。でも今の政権はちょっと意味が違ってて、何があってもイスラエル側に立つんですっていう…。いろんなユダヤ人団体から称賛されて、ハマスのしたことはテロだって言いきって…。でも今度はドイツにいるイスラエル人から一部反発があった。何でかと言うと今のイスラエルの政権をみんなが支持してるかって言うとそうでもないんです…」
歴史の反省から国としてはイスラエル支持であることは揺るぎないようだが、番組ではドイツの街で市民の声を聞いた。














