臓器移植法の施行から26年が経ち、脳死判定された件数は1000件を超えました。母親がドナーとなった女性が取材に応じ、臓器提供を決断するまでの葛藤について語りました。
「これが2人で撮ったのは最後かな」
遠藤麻衣さん、40歳。数年前、母親の緑さん(当時61歳)が交通事故で意識不明の重体になりました。遠藤さんも病院に駆けつけ、回復を祈りましたが医師から「機械で息をしていて、いずれ心臓は止まる脳死の状態だ」と告げられたといいます。
遠藤麻衣さん
「ぐちゃぐちゃの気持ちの中で、家族みんなが過ごしていた」
突然のことに悲しみ、迷った末に緑さんの臓器を提供することを決めました。
母の臓器提供を決断 遠藤麻衣さん
「母の臓器を取り出す手術は、今温かいが冷たくなって帰ってくるから、手術室に送り出すときは一番つらかった。それでもやめようとか、やらなければよかったというのはなくて、本当にありがとう、いってらっしゃい、頼むね」
緑さんの心臓などは、移植を待つ人のもとに届きました。
緑さんのように脳死判定された件数は、先週1000件を超えました。2010年の臓器移植法改正で本人の意思が分からない場合でも家族の承諾で提供ができるようになり件数は大幅に伸びましたが、それでも国内で移植を受けられる人は希望者のうち、3%ほど。国際的にも極めて少ない状況です。遠藤さんも葛藤があったとと話します。
母の臓器提供を決断 遠藤麻衣さん
「どうしても決めきれない部分、諦めたくない部分もすごくあって。臓器提供すると決めることで、母の命が終わる時間を私達が決めるというのは、どうしても必要にはなってきてしまう」
なぜ決断できたのか?それは、家族の間で事前に話し合っていたからだといいます。
母の臓器提供を決断 遠藤麻衣さん
「ママも死んだら(臓器を)使って全部。灰にしたらもったいないからと常々言われていた。思ったことを言葉できちんと大事な人に示しておくと、 残された側がどれだけ助かるか」
臓器提供を希望するか意思表示をしている人は現状、1割ほどに留まっていています。意思表示がない場合、医師にとっても家族に臓器提供の選択肢を示すことはハードルが高く、臓器提供につながらないケースも多いと指摘します。
救急医・日本体育大学大学院 横田裕行教授
「今まで一生懸命治療をして何とか良くなってほしいという中で、(家族に)臓器提供という機会がありますよというのは、なかなか正直言い出せない。主治医や受け持ち看護師ではなく、より患者さん側に近い医療職種が求められている」
「残された家族のためにも、日頃から臓器提供について話し合ってほしい」。遠藤さんはそう訴えています。
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