野生復帰した『朱鷺』
2023年9月に新潟県妙高市で、佐渡島の野生で生まれた個体と推定される足環のないトキ1羽が確認されました。
この個体は、佐渡市以外の本州で確認されたトキとしては33例目で、野生下生まれの個体としては15例目でした。
2022年12月末現在、野生環境の中で生きていると推定されているトキは、日本国内で545羽と見られています。

野生の環境で繁殖し、佐渡以外でも生息するようになった『トキ』。
これは単に絶滅に瀕した鳥を人間の手で復活させたというだけでなく、人と野生生物が共生できる環境を長い年月をかけて人々が模索してきたという歴史の上に成立した偉業と言えるのではないでしょうか。
1927年には、当時の佐渡支庁がトキ発見を懸賞で呼びかけるほど激減したトキ。1934年には天然記念物に指定されます。(1952年に特別天然記念物に指定)
戦後になると、稲作農業に導入された農薬により、トキはその直接的な影響や、餌の減少などにより急速にその個体数を減少させます。
「もう一度佐渡の空を舞う時の姿が見たい…」
こうした中、佐渡では民間による保護活動の機運が盛り上がってきました。
しかし、1958年には佐渡のトキは11羽まで減少、1971年には、能登半島で捕獲された本州最後のトキが死んだことにより、佐渡以外で日本のトキは絶滅しました。