戸籍上の「性別変更」のために、「生殖能力を無くすための手術」を事実上強制する規定に対し、最高裁が「憲法違反」とする判断を示しました。国会では、法律の見直しも迫られることになります。詳しく解説します。

性別変更に「手術必要」は違憲

井上貴博キャスター:
今回の裁判の申立人は50代未満で戸籍上は男性、性自認は女性です。“手術を受けていなくても、性別変更を認めてほしい”と訴えを起こしています。

10月25日の最高裁の判断は、“手術を受ける必要”という部分について、「規定は無効」と判断が示されました。

▼意思に反し手術を受けるか、▼性別変更を断念するか、という現状について最高裁大法廷は「過酷な二者択一を迫るもの。制約の程度は重大」と指摘しました。

なぜ自分の意思に反して手術を受けるのか。経済的なダメージも大きいし、身体的なダメージも大きい。手術ができなければ性別変更を断念するという「二者択一」を迫るのは、過酷だということで、今回の判断になりました。

世界40か国 手術なしでも「性別変更」可能

諸外国では、法的な性別変更は「手術なしでも可能」です。ヨーロッパを中心に40か国では手術をしなくても、法的に性別を変更することができるとしています。

現代社会とジェンダーを研究している中京大学の風間孝教授は「今回の判決は、トランスジェンダーが自認する性別で、社会生活を送ることが重要なことだと示されたといえる」と話しています。

身体的特徴が性別ではなく、自分がどう感じているのか。その内側に秘める思いが「性別」であり、社会生活を送ることができることに舵を切ったのは大きいということです。

オンライン直売所「食べチョク」代表 秋元里奈さん:
争点になっているうち「変更する性別の性器に近い外見を備えている」という点は、まだ戻されているところなので、完全に「手術無しで性別変更」というのがOKになったわけではないという認識です。

性同一性障害と診断されるというのは、色々なステップや検査を踏まえた上で、客観的に判断されているものなので、その人たちに対して、普通の人が認められているような人権を保護して生活できるようにするというのは、非常に大事なことだと思います。

社会的にどういうルールを作っていくかというところもセットで考えないと悪用されていくこともあるので、そこを踏まえた上で、全員が安心して暮らせる社会にしていかないと、と感じます。

ホラン千秋キャスター:
生きづらさを感じていた人たちが、少し前進して自分らしく生きるというところについて進んだとは言えるけれども、課題が無くなったわけではないということですよね。