酒を取り上げたら自分がいなくなると思った、でも全然いなくならない

 山口さんは、専門病院で治療プログラムを受けた後、退院。その後、参加した自助グループでは、さまざまなことに気付かされたと話します。

「心に苦しみを持っている人たちと話し合うと、アルコールで人生が苦しくなった人は、年齢や性別、文化など関係ないです」
「自助グループの中では、なぜ自分がこうなったか、答え合わせをするんです。私の場合、振り返ってみると、とにかく自分が頑張らなきゃとか、人に任せられないとか、人と比べたりとか、そういうのがごちゃごちゃになって、自分の中で整理できなくなっていったんです」

 そして芸能界から離れて、気づいたことがあるといいます。

「結局、芸能界で見てもらえた山口達也という人間を作ったのは、自分じゃなくて、見てくれていた皆さんだったというに気づくんですよ」
「そして一番大事なのは、感謝ということなんですよね、自分が頑張ったんじゃない、人に人生をつくってもらったんです」

 今、胸に刻んでいるのは、自分の人生を作ってくれた周囲の人への感謝です。

「私はアルコール依存症になったことを感謝しているんですよね。たぶん普通の人が聞いたら、『なめんじゃねえよ』と思うかもしれません。『どれだけの人に迷惑をかけてきたんだ』と。『アルコール依存じゃなくて自業自得だろう』って言われます。当然、自分でもわかってるし、それぞれの方にはすごく申し訳ないと思っているんだけど、そういう出来事で大きなつ底つきを知り、自分を知ることができたんです」

 山口さんは、2022年に特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)の飲酒運転防止インストラクター、依存症予防教育アドバイザーなどの資格を取得しました。
 23年3月には、会社を設立し、飲酒問題に悩む人たちをサポートする活動をしています。

 そして今は、酒がなくてもすごく幸せだと語ります。

「お酒を飲んでいるときよりも楽しいし、すごく幸せ。以前はお酒を取り上げたら自分がいなくなると思ったんだけど、全然いなくならないし、新しい自分が見えてきた」