■ NPT再検討会議への影響は?

久富:
夏に予定されているNPT再検討会議に、今回の会議はどのような影響を及ぼすと考えられますか?

中村 准教授:
ウクライナ危機という厳しい状況の中で、”軍縮” に対するものすごい逆風が吹き荒れています。そうしたなかで核を持たない国が集まって、強い意志を持って『核兵器のない世界に進んでいくのだ』ということが示されたことで、世界の ”NPTに向けた機運の醸成” がなされたと思います。国に対してだけではなく、世界の市民社会に対するメッセージでもあると思います。「私たちはできる」と。
ただ今回のこうした動きが『核を持っている国の方向転換』に直接結びつくかというと、なかなか難しいところはあると思います。しかし、今回の成功は、NPTに向けて『プラスの影響』を与えると私は考えています。

■オブザーバー参加を見送った日本

久富:
唯一の戦争被爆国である日本は今回、オブザーバー参加を見送りました。どのように受け止めていますか?

中村 准教授:
非常に残念ではあります。日本のオブザーバー参加は単に「身体一つそこに行く」というだけではなく、具体的な中身の議論に参加することが求められていた。とりわけ日本は、核の被害者の援助の問題で、広島・長崎そして福島の経験と知見をもっている。特別な貢献をすることができた訳です。そうしたなかで日本が具体的に動くことができなかったことは非常に残念です。

■ 被爆者や市長の役割は?

久富:
日本がオブザーバー参加を見送った一方で、田上長崎市長がスピーチする機会もありました。どんな役割を果たしたと考えますか?

中村 准教授:
これから核兵器禁止条約を前に進めて、より多くの支持を得て、強くなっていくというプロセスに入るんですけれど、やはり鍵になるが『核兵器の非人道性』です。これは決して広島・長崎の被害ということだけではなくて世界で行われた核実験の被害者も含めて、私たちがまだまだ知らない──どれほど核兵器が人類にとって大きな害悪であるかということを示していることが必要になります。
そういう意味では、被爆者や市長らが、直接、核兵器の非人道性を語るのは、これまでも、これからも重要な役割だと思います。