病気になる前はバスガイドやスーパーのレジ打ちの仕事をして、社交的だった朝子さん。人生が一変したのは2016年5月29日。岩木さんにとって、いまも忘れられない日付です。朝子さんが、新しい会社に転職する際、履歴書を用意するため証明写真を撮影してきたときのことでした。
(訪問美容師 岩木寛人さん)
「履歴書の名前を書けなかったりとか、文字を書けなくなっているので、白黒つけようって病院に行ったら、脳が委縮してるって診断を受けて」
診断は“若年性アルツハイマー”。7年が経ち、症状は介護施設に入居が検討される「要介護4」まで進行しました。いまでは息子の寛人さんの名前も思い出せません。それでも、好きな音楽を聴くとよろこぶのだと岩木さんはいいます。
(訪問美容師 岩木寛人さん)
「お風呂に入れなくなったら施設に入れようとか、そう言っている時期もあったんですよ。でも、そこにたどり着いたら、まだもうちょっといけるってなって。そういうのを繰り返していたら、いつの間にか介護資格をとっていて。最後の最後まで家で母ちゃんと一緒にいようって気持ちにはなっています」
トレードマークの紫髪は「母親にわかってもらうため」

朝子さんの介護のために街に戻り、訪問美容師や訪問介護を始める事になった岩木さん。いまはその道を、母・朝子さんが与えてくれたと思っています。
(訪問美容師 岩木寛人さん)
「不透明だったんですよ、何がしたいか。大阪でも東京でも何も成しえないまま名張に帰ってきて、母と暮らしていて笑顔を見ると、これで良かったな幸せだなって直感で感じます。人と何かをすることが、自分の一番望んでいることなんだと気付けた」
髪を紫色に染めるようになったのは1年前、母・朝子さんが岩木さんの名前を思い出せなくなってからの事です。
(訪問美容師 岩木寛人さん)
「母親が紫色が好きなんですよ。僕ってわかるじゃないですか。一つ個性的なところがあれば」
髪を紫色に染めてから、朝子さんは岩木さんを見ると喜んでくれるようになったそうです。
紫色がトレードマークの、ちょっと強面な美容師。これからも古くなったニュータウンで、母親と地域の人々に寄り添います。
CBCテレビ「チャント!」10月17日放送より