中国・杭州で行われているアジア大会(9月23日~10月8日)に出場している卓球女子のエース早田ひな(23、日本生命)。今大会は、団体・混合・シングルスの3種目でメダルが期待されている。そんな早田の武器は"サウスポー"から繰り出される強烈なフォアハンドだ。


しかし、驚くことに早田は食事や字を書くなど日常生活においては全て「右利き」。実は、卓球をする時だけ「サウスポー」なのだ。実際に、2020年11月にプロ野球の始球式に登場した時も「右」で投球していた。

では、なぜ早田は卓球だけ「サウスポー」なのか?
そのきっかけとなったのは早田の地元・北九州市にある卓球教室「石田卓球N+」の石田千栄子コーチとの出会いだった。それは早田が4歳の頃、姉の練習について行ったことがきっかけで、早田自身も卓球を習い始めることとなった。

最初は右手でプレーしていた早田だが、半年経った頃に石田コーチはある異変に気づいたという。

「ひなは『手は右利き』なんですが『足が左』なんです。実は手よりも足の方が重要なんです。なぜかというと、重心のかかり方が違うんです。私たちは右利きなんで、必ず靴下は右からはく時も階段上がる時も全てのことが右足からなんです。でも、早田は全てが左足が軸になるんです」

卓球で重要なフットワーク。「利き手」と「利き足」が反対だと足や体幹がブレやすいためプレーに支障がでてしまうというのだ。

「『手』は台で球を打てば直る、うまくなる可能性はあるんですけど、『足』は直らないんです。私が卓球場始めて34年になるんですけど、いつも新しい子が来たら悩みます」

利き足は矯正することが難しい。どちらに合わせるべきか、悩んだ石田コーチはある行動に出た。

「左か右かどちらがいいのか迷ったので、家族に聞いたんです。早田のお父さんはサッカーをやってたんですけど、どっちですかって聞いたら『左』って言われたので、早田ひなも『左』でいこうっていうふうに決めました」

長年に渡り子どもたちの指導にあたってきた恩師・石田コーチのこの決断が、卓球日本女子のエース "サウスポー早田ひな誕生"に繋がっていたのだ。

「ひながアジア大会で優勝するっていうことが世界選手権とか今度はパリ五輪でメダルを取るっていうことに繋がる、特に個人戦でメダルを取るっていうことはみんなの願いですね」

地元の恩師からのエールを受け、早田がアジアの頂点を目指す。