全日本実業団陸上が9月22~24日に岐阜市の岐阜メモリアルセンター長良川競技場で開催される。アジア大会中国杭州(陸上競技は9月29日~10月5日)のメダル候補や、8月の世界陸上ブダペスト代表だった選手が多数出場。レベルの高い争いが各種目で展開される。
本格復帰の桐生が目標とするのは?
故障から復帰した桐生祥秀(27、日本生命)が、アジア大会中国杭州へのステップとして全日本実業団陸上男子100mに出場する。
桐生は5月の木南記念で10秒03(+0.7)をマーク。アジア大会出場選手中一番のシーズンベストを持つ。だが同じ5月に左脚を肉離れ。8月までスピードを上げて走る練習ができなかった。
9月19日のアジア大会結団式後の会見で、全日本実業団陸上の抱負を次のように話した。
「先週(復帰レースで10秒45)は練習の一環で出ましたが、そのときより速く走ることが目的です。優勝することが課題ではなく、予選を走ってみて、どういう感じかによって、決勝をどうするか当日決めます」
復帰レースは9月12日の東海大種目別競技会で、10秒45(+0.2)で走った。数字だけ見ればまだまだだが、9月上旬の取材時に次のように話していた。
「優勝しないといけない、という気持ちは大事なんですが、この大会はここをこうしていく、次はこうやっていく。練習で準備したことを毎試合、コツコツできていたので、そういったところは成長しているのかもしれません」
今季の桐生は勝つことだけにこだわらない。大会毎に(特に動きについて)やりたい目標を設定し、それをクリアしていく。木南記念ではそれが成功して、自己記録(9秒98)に0.05秒と迫る10秒03まで記録を伸ばした。全日本実業団陸上も、タイムが復帰戦よりも良くなっていたら、アジア大会に向けて順調ということだ。
レース展開は、多田修平(27、住友電工)や坂井隆一郎(25、大阪ガス)といったスタートダッシュに強い選手には、前半で後れをとる可能性がある。だが中盤のトップスピードを武器とする桐生が、どんな追い上げを見せるかに注目したい。
アジア大会400m金メダル候補のダブル佐藤が200mで対決
佐藤拳太郎(28、富士通)と佐藤風雅(27、ミズノ)。男子400mでアジア大会の金メダル争いをする2人が、全日本実業団陸上の200mで対決する。

7月のアジア選手権では佐藤拳が45秒00(当時日本歴代2位)で優勝し、佐藤風が45秒13で2位。全盛期は過ぎたとはいえ、43秒93のアジア記録を持つY・アル・マスラヒ(35、サウジアラビア)をダブル佐藤が破った。
そして8月の世界陸上ブダペストでは、予選で佐藤拳が44秒77と日本記録を0.01秒更新し、佐藤風も44秒97の日本歴代3位をマーク。2人とも決勝進出は逃したが、準決勝で佐藤風が44秒88と日本歴代3位記録を更新した。
アジア大会でもダブル佐藤が、アジア選手権に続いて金メダル争いを展開するだろう。

2人とも前半200mのスピードを重視してきた。特に佐藤風は、400m前半のスピードが400m全体に影響する。ブダペストの準決勝で前半の200m通過が21秒09(主催者発表)だったことを知り、次のように勇んで話した。
「21秒0に近づける練習はしていたんですけど、21秒3が限界だったんですね。今後さらに練習していけば21秒切りもできると思います。それができればもっと前半、置いてかれないでいい位置で走れる。44秒5を出すにはそこだと思います」
単独種目としての200mで見たとき、佐藤風の自己記録は20秒72である。200m通過で21秒0を切るには、200mの自己記録を20秒台前半に上げておきたい。
佐藤拳は20秒93が自己記録。200mの出場機会が少ないためで、実際の力はもう少し上だろう。世界陸上後に千葉佳裕コーチ(城西大監督)と、200mのスピードアップが課題であることを確認した。
全日本実業団陸上は専門外の200mではあるが、2人のタイムに注目したい。そこがアジア大会にもつながる部分だ。