(Q.“元湯 陣屋”に来られたのは藤井七冠は初めてかなと思います。このタイトル戦では本当に有名な宿だと思いますが、その印象と“陣屋事件”というのもありますが、何かご存知なことがあれば教えてください)
本当にこれまでも数々の対局が行われてきたところで、自分もいつか伺ってみたいなと思っていたので、今回それが実現したことを嬉しく思っています。お庭がすごく広くて、対局室からの景色も綺麗ですし、すごくリラックスできる素晴らしいところだなと感じています。
陣屋事件はもちろん有名ですし聞いたことがあります。
升田先生が木村十四世名人を香落ちに指し込んだというところが一つの発端だったかと思うんですけど、升田先生にもいろいろな葛藤があったのかなということは感じます。
(Q. 今回いよいよ8冠がかかるシリーズですが、これまでのタイトル戦と心境で何か違いはありますか?)
今、本当にいつもよりも多くの方に来ていただいてるので、それでやっぱり緊張感があるなとは思っている。対局に臨む上でこれまでと違った特別なことができるというわけではないので、昨年の棋聖戦やこれまでの対局を踏まえて、そこから少しでも成長したところを見せられればなと思っています。

(Q.昨年の棋聖戦が唯一、これまで永瀬王座とのタイトル戦だったかと思うんですが、そちらで戦ってみての印象は?)
まずは序盤戦術という点で、本当にうまくやっぱり立ちまわられたのかなという印象がある。研究会で指していた将棋からもさらに工夫したというか、違った形を番勝負で採用してこられたという印象があるので、とてもうまいなと感じました。中盤以降でも、時間配分も含めて本当に上手く指されてすごく大変なシリーズだったと感じています。
(Q.今回その教訓を踏まえての特別な対策みたいなものはありますか?)
まず序盤の作戦という点と時間配分でしょうか。王座戦はチェスクロックの5時間という持ち時間で、5時間というのは結構長いんですけど、一方でチェスクロックなので、本当に時間残り時間も少なくなってくるとやっぱりあっという間だということも感じているのでその辺りを踏まえて、どう戦っていくか考えていきたいと思います。
(Q.今回歴史的なシリーズになると思います。お相手が気心の知れ、練習将棋もしょっちゅうされている永瀬王座ということで、今回のシリーズでどういう棋譜を残していきたいですか?)
今回の王座戦は自分にとっても大きなものだと思いますし、多くの注目をいただいているので、やっぱり将棋の内容としてもそれに見合った多くの方のご記憶に残るような対局にしたいなと思っています。
(Q.先ほどお名前が出ていた升田幸三実力制四代名人は、タイトルが3つだったときに「全冠制覇」というのを成し遂げた名棋士で、全冠制覇その後、大山康晴十五世名人、羽生善治九段がそれぞれ五冠、七冠で達成をされているが、藤井七冠は今回史上初の八冠全制覇に挑むということで、そういった過去の名棋士に挑むわけですがそういった緊張感、そのような歴史の系譜に連なることがかかることについてどう思う?)
記録に関してあまり過去の人と比較してということは自分自身は意識していないが、大山先生、升田先生の将棋は私も奨励会の頃などに並べて、すごく勉強になったというか、やっぱり現代の目で見ても、すごく先進的な将棋を指されていたと思っています。

(Q.永瀬王座とのタイトル戦ということで、タイトル戦自体は2回目ですけれども、藤井七冠が四段時代から、研究会で将棋を指してきた間柄の永瀬王座、当時は永瀬王座もまだタイトル獲得前だったと思うが、そういった方と切磋琢磨して強くなって、史上初の八冠がかかる大舞台で対戦することの重みや実感は?)
永瀬王座は、私が四段のころに声をかけていただいて、それ以来研究会をしていただいていて、本当私にとって勉強になることばかりで、それで自分の棋力がやっぱり引き上げられたのかなとも感じていますし、その後に永瀬さんが王座を取られてすごく活躍されて、刺激にもなったのかなと思っています。今回、こういった本当に大きな舞台で、永瀬王座と対戦できるっていうのはすごく自分にとっても楽しみですし、面白い内容の将棋にしていきたいなと思います。














