飯塚起用なら史上初の両リレーでメダル獲得の可能性も
今季の400m世界100位までに、4人以上の選手が入っているのは5か国だけ。各国上位4人の平均タイムは以下の通りである。
米国:44秒24
ジャマイカ:44秒35
南アフリカ:44秒69
ボツワナ:44秒88
日本:44秒97
3人が入っているフランスや、2人しか100位以内に入っていないものの、今大会銀メダルのM.ハドソン・スミス(28)のいる英国らも上位争いに加わってくるか。
しかし日本は“4×400mリレーのプラスアルファ”を出せる国である。400m個人種目の記録よりも、かなり良いラップを出すことができる。
昨年の世界陸上オレゴン決勝の、各走者のタイムは以下の通り。
1走=45秒73:佐藤風雅
2走=45秒19:川端魁人
3走=43秒91:ウォルシュ・ジュリアン
4走=44秒68:中島佑気ジョセフ
※1走以外は10mの加速区間後のタイムなので、個人種目の400mより速くなる
43秒台のラップで走ったウォルシュが、ケガで間に合わなかったのは痛手だが、ダブル佐藤と中島の3人は「43秒台を出す」ことを当然と考えている。この3人は400m準決勝以降でどこかに痛みが生じていない限り、4×400mリレーに起用される。
残り1人は今泉堅貴(21、筑波大4年)と地主直央(22、法大4年)がリザーブとして選ばれている。今泉は日本選手権4位で45秒54が自己記録、地主は日本選手権5位で45秒58。若手の2人には勢いがある。
そしてもう1人の候補が200m代表で、予選で20秒27(±0)の海外自己最高をマークした飯塚翔太(32、ミズノ)である。アジア大会などで4×400mリレーで活躍したことがあり、ラップの自己記録は44秒6と、今回のメンバーに入っても遜色ない。
飯塚は200m準決勝後に「3人は43秒台で走ると思うので、その中に入るのは(足を引っ張らないか)怖さがあります」と笑いながら話した。もちろん「どんな形であれ、任されたら全力でやるだけです」という覚悟はできている。
もしも飯塚がメンバーに入りメダルを獲得したら、4×100 mリレー(リオ五輪銀メダル2走、世界陸上ロンドン銅メダル2走)と合わせ、両リレーでメダルを獲得することになる。
佐藤拳は7月の取材で、ブダペスト大会の目標、意気込みを次のように話した。
「アジア記録は2分59秒51。それは確実に超えられるメンバーが揃っていると思いますし、超えなくてはいけない、と思っています。アジア記録を超えられればメダルは取れます。今年こそは絶対にメダル。取れたらいいな、ではなく、取らなくてはいけない。誰が走るのかわかりませんが、リザーブも含めて、メダル獲得を全員の共通認識とする4×400mリレーチームを作っていきたいと思っています」
メダル復活を期す4×100 mリレーがそうであるように、4×400mリレーも多くの人たちの思いを乗せて、初のメダル獲得に向けてトラックを4周する。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















