向かった先は…“飛燕”が展示される 川崎航空機の工場があった地域
(史典さん)
「飛燕が展示されているらしいから、よかったら行ってみよう」
(樋口一さん)
「ぜひ行ってみたい」

戦時中、航空機製造が盛んで飛行場もあったことから、空の都「空都」とも呼ばれた各務原市にある、航空宇宙博物館。ここはまさに、樋口さんが働いていた川崎航空機の工場があった地域です。
ここには樋口さんが、整備に心血を注いだ、旧日本陸軍の戦闘機「飛燕」が。
細長い機体には、日本軍の戦闘機で唯一水冷エンジンが搭載され、高度1万メートルまで上昇しアメリカの爆撃機B29を攻撃しました。1年がかりで当時のままに修復された、世界で唯一現存する実物の機体です。


(樋口一さん)
「どこでもいいで触りたい。怒られてもいいで触りたい」
当時のことを鮮明に思い出し、言葉に力がこもります。
(樋口一さん)
「あそこの穴が空いている所に始動転把を突っ込んで、カーッと回す。そうするとエンジンが始動してOKと言った。バーッとプロペラが回りだした。空襲があるたびに整備をほかって逃げた。助かって工場に帰ってくると飛行場が爆弾でめちゃめちゃになっていて…そういう悪い思い出。苦労して整備したことを思い出す」

今も樋口さんの脳裏に浮かぶのは、戦争の不条理です。
(樋口一さん)
「『とにかく平和であってほしい』ということだけは願っている。『若者よ、しっかりと頼むぞ』ということ」
(史典さん)
「二度と戦争が起こってはいけないですし、僕自身も受け止めて記憶のバトンを後世にしっかり伝えていきたい」
伝えたいのは、誰もが全てを投げ出すことを強いられた、戦争の愚かさです。
















