世界陸上ブダペスト(8月19日~27日)に出場する男子400mハードルの黒川和樹(22、法政大)と児玉悠作(22、ノジマT&FC)を日本記録保持者、為末大さん(45)が解説。同種目で2回(2001エドモントン、2005年ヘルシンキ)銅メダルを獲得している為末さんは、現役大学生で2大会連続出場の黒川について「これから伸びていく選手」と期待を込めた。

黒川和樹は「すごい記録出る可能性」

前回のオレゴン大会は初出場ながら準決勝に進出している黒川。大学2年で日本選手権を制し、今年は3連覇がかかっていたが予選敗退。今大会の代表入りが危ぶまれたが、有効期間ぎりぎりの7月30日の田島記念で優勝、世界ランキングでターゲットナンバーに滑り込み、代表に決まった。東京五輪にも出場していて9月に開幕するアジア大会の代表にも決まっている。自己ベストは2021年にマークした48秒68だ。

今年5月の黒川選手

為末さん:
ちょっと面白い感じじゃないですか。手足も長くて結構優雅に走るタイプで、むらがありますね。良い時と悪い時の幅があるタイプの選手でもあるので、それが特徴ですね。ハマる時にはすごい流れるようにゴールまで走れるようなイメージの選手だと思います。

Q.当時のコーチだったり、天才の素質があるみたいなことをおっしゃる方もいらっしゃると思うんですけど、為末さんもそういう一面というか、走りとかを見て感じられる部分はありますか?
為末さん:

やっぱりムラがある感じなんですよ。でもそれも1つの特徴で。いつも安定して突き抜けられる選手もいるんですけど、彼の場合はいつかすごい記録出しちゃうんじゃないかという期待感があるという意味でのムラも1つの彼の個性かなって気がする。ハマった時の区間をとっていくと、私のタイムと同じか、もしかしたら速い区間を出してるものもあるぐらいなので。それがちょっとまだぶつ切りになっていて、上手く組み合わさってない感じなんですけど、それがハマり出したらすごい記録が出る可能性のある選手になると思いますね。特に1台目に入るのがすごい綺麗で、あれができるってことはそれをずっと伸ばしていくだけなので、その可能性が十分ある選手だと思います。

Q.9月のアジア大会にも出場。どの辺りが狙えそうな選手ですか?
為末:

彼がパリ(五輪)を狙っていくとしたらアジア大会の時の順位も結構重要なんだろうと思いますね。48秒台で走ってくると結構パリが面白くなる気がします。今はちょっと我々の時よりかは世界のレベルがあまりにも上がっちゃったので「日本記録出したってなかなか」って感じはあるんですけど、”黒川覚醒”っていう意味ではアジア大会で49秒切って金メダルとか上の順位が取れたら面白いと思いますね。

Q.覚醒する可能性はかなり秘めている選手?
為末さん:

色んなものが安定していて「後どれいじったら速くなるんだろう」っていう感じではなくて「なんか色々バラバラしてるなぁ」という感じだけど、速い選手なんですよ。それが本人の中で上手くまとめられて、ちゃんとやれていくとすごい記録が・・・だから1人1人素晴らしい演奏家はいるんだけどオーケストラとしてまだ完成してない感じのレースだと思うので、それを本人がこれから成熟させて完成させて部分部分見ていくと日本記録がでるとかそういう要素がいっぱい詰まっている選手だと思いますね。今後、日本記録も含めてですね、覚醒する可能性を秘めている素晴らしい選手だと思います。

今年急成長の児玉悠作

初代表の児玉悠作(22、ノジマT&FC)は法政大出身で黒川の1学年先輩。5月のGGPで50秒16だった自己ベストを48秒77と大幅に更新し、急成長を遂げている選手だ。

児玉選手

Q.児玉選手については?
為末:

上手でしたねハードル。なんかまだ途中って感じですね見ていて。色々技術的に磨いて行きながら・・・今年結構伸びてきている感じなんですよね。そういう意味でこれから伸びていきそうな期待感はありますけどね。

Q.ハードリングとかに特徴があったりするんですか?
為末さん:

後半まで崩れないタイプと言って、後半伸びてくるような走りをしてる選手で、彼がチャレンジしたいと思っているのはもうちょっと前半から1つ高いレベルでスピードで入りたいと思ってるんじゃないかと思うんですけど、そういうことにこれからチャレンジすると思います。だからそれが出せるといいですよね、最初から突っ込んで行くのが。

Q.今後の期待の若手?
為末さん:

そうですね、これから伸びていく選手だと思うので期待出来る選手だと思います。

【男子400mハードル】
■予選
20日 午後6時25分~
■準決勝
21日 午前2時33分~
■決勝
23日 午前4時50分~

(日本人選手の出場予定)
児玉悠作、黒川和樹、岸本鷹幸